日本でライセンス生産されていたヘンリープールブランドが、今年の7月で日本から撤退しました。
以前の会社で関わらせて頂いていたのでお客様からお話を頂く事もあり、僕としても
非常に残念でなりませんが、最近の嗜好性の強いお客様にとりましては、
ライセンス物では、ご満足頂けなくなってきたのだと思います。
今回の撤退は、数年前からの紆余曲折の結果で、
余程、本国に近い物を取り扱わない限り、消費者には受けないのではないでしょうか。
英国本国からヘンリープールのカッターが来日し、
採寸・仮縫・本縫を本国で行って仕立て上げる『トランクショー』は、
ライセンス品の数倍の価格にも関わらず、年々オーダーされるお客様が増えていることも、
その証しではないかと思っています。
撤退は、今までファンでいて下さった顧客の皆様にとって迷惑な話だと思いますし、
中には、一生のお付き合いと思って下さっていた方もいらっしゃるのではないかと思っています。
そのお客様たちの為に存続させる事も、経営責任だと思うのですが、反面、
そうなると、ロイヤリティーの問題とか、経営的には難しくなります。
で、結局は行き着くところ、ヘンリープールというのは、
やはりテーラーであって、ブランドではない。
僕はそんな風に思うのです。
ヘンリープールが、日本で新たにオープンする時は、
英国本国と同じように、カッター(型紙作成&裁断を担当)がいて、
テーラー(縫製を担当)がいて、本国と同じ洋服を作る事ができる環境を整えるか、
ヘンリープール社が、将来、英国本国で既製服を取り扱うようになって、
それを日本に輸入、もしくは同じクオリティで販売するなら、皆さまに受け入れてもらえると思います。
実際、1964年にヘンリープールが日本に入ってきた当時の服は、
英国人カッター(縫う事も出来る人でした)が常駐し、そのカッターの指示のもとで、
日本のテーラーが、本国とほぼ同じ附属を用いて縫っておりましたので、本国に近い洋服でした。
下の画像は1979年に本国で縫われたヘンリープール製3ピースです。
参考資料として、店舗に置いてあります。
ラベルは首元に付きます。
以前、日本で再現した時には、ここに付けると、
裏地の背中心が開かないので、着用感が悪くなると却下されましたが、
実際に縫い付けて着てみると、何ら大差なく、この場所に縫い付けたエピソードがあります。
余談ですが、ヘンリープール社がここに縫い付ける理由は、
着る人が主役で、一旦着てしまえば店名が見えない場所がここだからです。
洋服が主張せず、着手のパーソナルが引き立つ服を作るという思いが集約されたディテールです。
最後になりましたが、ヘンリープールは、
英国のサヴィルロウ(背広の語源になったと言われるロンドンの仕立屋が集まる通り)に
店を構えるテーラーで、日本の洋服のルーツともいえる名店です。
白洲次郎さんが晩年着てらっしゃった事も有名ですが、
日本が文明開化で、和装から洋装に切替り、
その時に、伊藤博文さんを始め、政府の要人がオーダーしたお店です。
サヴィルローにある、それぞれのテーラーには、それぞれ特徴があるものの、
共通項が多く、それがブリティッシュクラシックスタイルとされている特長なのでしょうね。
その中でもヘンリープールは、もっともオーソドックスで奇を衒わない普遍的なスタイルを持った
テーラーです。
下の画像は、僕のジャケットです。
年をとっても着る事のできる普遍的なジャケットです。
少々太っても着る事の出来るユニバーサルサイズ?ズングリ!(涙
どれも、お客様のご要望を引き出すときのサンプルとして、店内に置いてあります。