春先に向けたMa65です。少し着て馴染んできたので紹介させて頂きます。
スペンスブライソンのアイリッシュリネンで作りました!
*Ma65については、こちらをご参照願います



遅くなって申し訳ありません。
今シーズン最後になるYさんのM(a)65です。
290gと軽くてソフトな生地ですが、カシミア20%混で、
とても暖かいです。明日からの上海出張に是非、着て行って下さいね♪


このM(a)65も、僕が製品洗いしたのですが、
先に生地を少し切って洗って縮率を検証していたのですが、
ほぼ予想通りの縮み加減でした(笑。いい感じにフワフワ感も出ていますし♪

普段はブラッシングと水スプレーで皺も伸びますし、臭いも取れますし、
その程度のお手入れでも、シッカリして下されば十分です。
もし万一食べこぼしをされた時は、ご一報下さい。
お勧めの対処方法をお伝え致します♪




完成しました!
9月末にお問い合わせを頂いてから、
千葉から採寸→仮縫とお付き合い頂いて仕立て上がりました。
毛足の長いアルパカ素材を「ジャケット代わりに羽織れるコート」というコンセプトで。


毛足の長さは11mmで、なんともゴージャスです。
着て動くと、キラキラと輝くんです!
繰り返しますが11mmです!
測りました(爆。


全体のサイズ感はジャケットですので、袖も細く、
そこに20mmボタンを5個並べましたので(通常15mm釦です)、
生地のボリューム感が、より一層、引き立って、物すごい質量というか、オーラ!!
Vゾーンやポケットのフラップ巾、釦位置など全体のバランスも上手く取れたのではないでしょうか。


今回のコートは、
Aさんが、既製服で見付けられたデザインを、
ご自身で探しておられた生地で作りたい!と云うところから始まりました。

こんな場合、まず生地探しですが、
以前、Iさんからオーダー頂いたコートを思い出し、
直ぐに生地屋さんに確認すると、まだ何着分か在庫があるとのこと。
Aさんに連絡し、生地サンプルを送らせて頂く事にしました。

生地を送らせて頂いている間に、
ご希望のデザイン画像を送っておいて頂きました。

これなら、どのラインで対応可能かの打ち合わせなんかもどんどん進み、
完成までの全体のスケジュールをお伝えして、ご来阪の段取りをして頂くことになりました。
もちろん生地サンプルから、「これです!」と決まった上で。

採寸の当日は採寸だけではなく、
ディティールについての打ち合わせが主です。
頂いた画像をベースに、そこから更にAさんのお好みに合わせて、
肩巾や襟巾、そして釦位置やパーツの配置などの全体のバランスを考えます。
その時に、Aさんの背格好と、どうマッチングさせるか?まで考えながら、両立が無理な部分は、
状況をお伝えしながら、ご納得して頂きながら「形」にまとめ上げます。

体に合わせる仮縫ではなく、感覚に合わせる為の仮縫。

Aさん、本当にありがとうございます!!
僕も愉しませて頂きました。



Ma65
お客さま第1号!


今回はTさんのご希望で製品洗いしましたが(僕が自宅で!)


洗う前だと、こんな感じです! お好みは分かれるところですが、僕は洗う派!


ネームタグは、こんな感じで。
ご希望で、なくても良いですし、場所の変更もアリです。




特に北イタリアではクラシックなデザインのコートです。
既製服でも作られているデザインですが、全体の雰囲気は別モノ。
全体から醸し出される雰囲気もそうですが、例えばこのコートの袖付けのように、
サルトリアの技法の1つ、『ジーリ・リンボッカーティ』という膨らみのある優雅で貴族的な袖付けは
大量生産型の工場縫製では出来ないでしょう。


極太の上下衿も特徴的で、工場縫製では難易度が高い意匠です。
写真では判り難いかもしれませんが、ラペルのクリースも軽くアウトカーブさせてあったり、


手で纏り付けたバックベルトや、細かい意匠的な部分にも手仕事が満載されています。
その他にも、随所にサルトリアミラネーゼの技がてんこもり&オンパレードなコートに仕上げてもらいました。

しかし一見ディティールとして語られやすいこれらの技巧も、
意匠的な理由よりも、見えない部分のプントイングレーゼ(特殊な纏り縫い)も含め、
この最高の生地(マーティン&ソンの超へヴィーなベネシャン織)が着込んだ時、綺麗に育ってもらえるように!
それが作り手の願いであり、敢て着用感を滲ませる事で高まる存在感を狙っていたりするのです。


生地は、オーダー会当日までにご来店頂き、このコートに合うものを数点まで絞っておいて、
その中から当日、縫い手が「縫いたい!」と思う生地を選んでもらう。
Nさんらしい、オーダーの入れ方をして下さいました。

これには、初めての河合氏も感動したようです。
Nさん、いつも楽しく仕事をさせて頂き、本当にありがとうございます!

最後に、アルスターコートの一般的な出自ですが、
19世紀半ばにアイルランド島北東部に位置するアルスター地方で織られる、
粗野で重い生地で作られていたデイリー&ヘビーユースの機能性重視のオーバーコートでした。
フロントのデザインは、基本、両前のダブル(風向きによって重なりを逆にする)で、
ウエストに巻くベルトが付き、襟も立てられるという完全な実用本位。

その後、シングルでケープが付いたタイプが多く見られるようになってきたようです。
シャーロックホームズに出てくる紳士がよく着ているスタイルですね。

今回のコートは
生粋のアルスターではありません。
普通のアルスターコートはセンターベントなのに対し、
このコートは、背にピエゴーネ(大きなヒダの意味)を持っています。
イタリア軍に限らず、他国軍でも採用された『軍服』としてのアルスターコートが
現在のミラノのサルトリアで作られるアルスターに酷似している事からも、出自は軍服なのでしょう。

このように、アイルランドで生まれたアルスターコートですが、
19世紀後半から20世紀前半の戦争期に、
アルスターの一亜種であった「ピエゴーネ付」のアルスターが
機能的要請によって軍服として採用され、実際の軍服としての用途を変遷し、
イタリアで、現在のようなアルスターコートスタイルに落ち着いたと考えられているようです。

実際、ミラノ最高峰の1つ「A・カラチェニ」でも、このコートのオリジンとして『軍服』を挙げています。
イタリア語でulsterという意味が、このデザインに直結しているのではないか?と。
クレセントの河合氏によると、イタリア人は、ウルステル(ulster)と
下手クソな発音で、このコートのことを呼ぶそうですよ(笑。

そんな歴史的変遷から、戦後、
生地も幾分ソフトな生地を使うなどして、
主に比較的寒冷な北イタリアでクラシックコートとして
生き残ってきた歴史を背負う、だからこそ男臭いコートなんだと思います。

ちなみにモーニングの原型は、18世紀のイギリス貴族の乗馬服です。
イギリス貴族が、朝の日課である乗馬の時に着ていた乗馬服が起源になっています。
朝に着るからモーニング。朝に食べるのもモーニング!服好きは区別の為にモーニング「コート」って言いましょう。
冗談じゃないですよ(笑。 モーニングの由来も、正式にはモーニングコートって呼ぶ事も本当なんです!

更に、そのライディングコート(乗馬服)がアルスターコートの原型と言われていますから、
ライディングコート(乗馬服)が、現在の紳士服のほとんどのモデルの
始祖と呼んでも大丈夫なのではないでしょうか。

付け足しですが、アルスターはピーコートやトレンチコートの原型とも言われています。
こんな風に、洋服って何かを出自としている事が多いのですが、
あとは洋服史の専門家に任せましょう!



仮縫い後、打ち合い寸法やボタン位置などの微調整に再度お付き合い頂き、
Uさんのホワイトカシミアのチェスターコートが完成しました。
とてもゴージャスで濃厚な雰囲気が漂っています。
生地の質感を生かした仕立てです。
天然のアザミを使ってリップル加工が施されています。


前に迫り出すバストドレープからウエストにかけて、
やり過ぎ感が出ないように、立体的なバランスで上品に絞らせて頂きました。


頻繁に着ていただくコートでもないですし、
末永く着て頂くコートですから、Uさんと打ち合わせの上、
クラシックな雰囲気を漂わせる仕上がりをイメージして、完成させました。
メンテナンスについてもお伝えしていきますが、Uさんは元々業界の方で、僕より大先輩!
僕の方が教えて頂く事が多いですね。それにしても最近、元アパレル業界で、今は事業家の方が多いです。
嬉しい限りです!! Uさん、この度も本当にありがとうございました。
このような機会を託して頂き、本当に感謝しております。




以前ご紹介させて頂きました、
アニオナのアルパカ素材のコートです。
先日お渡しした時に写真を撮らせて頂くのを忘れ、
お近くにお越しとかでKさん、わざわざ寄って下さいました!!
Kさん、何て良い人なんでしょう!(って、前々から分かってますが笑)
僕も作ろうかと思いながら、いつも後回しになりますが、とっても暖かいそうです。




ラムズゴールデンベールとカシミアの混紡という
ラグジュアリーな生地で仕立てたクラシックなチェスターコートです。
触った感じ、コートにすると薄く感じますが、目が詰まっていて650g/mもあります。
そのせいか、厚手のカシミアのような感じではなく、ドレープ感のあるシャープな雰囲気で凄く暖かいです。


以前、ユーロテックスの生地で『ダイヤモンドケーブル』という生地がありましたが、同じ原理です。
糸番手は太いのですが、繊維番手が極細ですから、
糸の断面を見ると、繊維密度が高くて空気をたっぷりと含んでいます。
この意味、瀬戸大橋のケーブルの断面を見た事がある方なら分かって頂けると思います(笑。


糸番手がケーブルの直径だとすると、繊維番手は赤青黄で、各色127本のピアノ線から成っています。
直径約1mのケーブル1本は、何と!!
直径約5mmのピアノ線が34417本も束ねられて作られているそうなんです。
1本の棒状より、こちらの方がしなりやすく、強度もありそうですよね!
なんだか、応用力学?の勉強みたいになってきましたね(爆


見た目にはシンプルですけれど、
こんなコートこそ、ラグジュアリーの王道ですね。
Nさん、大切に末永くご愛用頂けますよう、マッセアトゥーラでも、
しっかりメンテナンスをさせて頂きますので、これからも宜しくお願いいたします。




人は、その制服どおりの人間になる。
これは皇帝ナポレオンが残した有名な言葉の1つです。
彼は皇帝即位後も大佐服を着て、自ら陣頭指揮を執る事を兵に示しました。
服が、人の意識に訴えかける影響は大きく、また自らの言動も変わる事を彼は分かっていたのでしょう。

意識は変えようとしても、なかなか変わるものではありません。
それよりも、環境を変えるほうが、結果として人は変わると言われています。
ナポレオンの、この言葉はまさにそれを表しています。服は、変えることのできる環境のひとつ。

ビジネスシーンでスーツを着て活躍している自分をイメージしてください。
洋服を着てデートしている時の自分を思い浮かべて下さい。
服は、人の心理に様々な影響を及ぼします。
相手に自分をPRできていますか?
しっくり馴染んでますか?

相手に抱いて欲しい信頼感、安心感、行動力、清潔感などを表現できていますか?
もう一度「人は、その制服どおりの人間になる」 あなたがどんな人間なのか相手に伝わっていますか?

今日はいきなり重い内容で始まりましたが(笑、
このコートをオーダーされたYさんは、ある業界ではまさに皇帝と呼べる方です。


昨年、Nさんがオーダー下さったコートを見られて、
Yさんのお好みに合わせて、ご希望部分をチューニングさせて頂きました。


襟の立ち方をご覧下さい!
これぞ皇帝の名に相応しいビッグで、天に向かってそびえ立つ襟。
体格がとても良いYさんですから、これだけのボリューム感があっても、全体のバランスは取れます。
Yさん、益々のご活躍とご発展を、お渡しに際しまして、このコートに託します。
いつもありがとうございます!次回も楽しみにしております!




おぉ!いい感じやね~♪


少しだけ絞ってもらって正解やね~
僕はコスプレがしたい訳じゃないから、絞ってもらって良かった。


うん、柔らかい仕立てやね~
生地がしっかりしてるから、これだけ柔らかくてもシルエットも崩れないね。
いい感じ、いい感じ。


柳瀬さん、どう?背中の感じ?
はい、いい感じですよ。微妙なドレープが効いてますよ。
お写真お撮り致しますので、是非ご覧下さい。


あ~ やっぱり良い感じですね。エレガントです。そのまま!写真撮ります(笑!
うん、分かった、、そんなにいい感じなの?
ほら、いい感じでしょ!


このコートは、技術の中山君指導のもと、マイスターファクトリーのS君が縫い上げました。
貴重な機会を下さったHさん、ありがとうございました。そして、
S君と中山君、お疲れさまでした。