もうかれこれ4年目のお付き合いになるFさんから、
「何度か着て気付いたのですが、今回のシャツ、タイスペースの開きが違うんです~」
というご連絡を頂いたので、最初、「裁断ミス?」とハッとしました。
裁断ミスであれば、首周りを小さく作り直しをさせて頂かなければなりませんが、
それと同時に、「もしかして今回のシャツが大きいのではなく、
それまでのシャツが徐々にクリーニングで縮んで小さくなってしまって、
対比的に今回を大きく感じられているのかもしれない。」という思いもありました。
そこでFさんにお願いして、同寸で作らせて頂いている今までのシャツをお持ち頂きました。
僕が、「いつ頃のシャツから、そんな風に感じましたか?」と尋ねると、
するとFさん、「最初の頃は大きいとは感じなかったんですけどね~」と仰りながら、
2年半前にお作り頂いたシャツを手に取られたんです。
実はFさんの場合、2着目で完成した型紙以降(3年以上も前です)、
それからずっとサイズを変えずにご注文頂いてます。
ところが、実際に寸法を測ってみると、
お持ち頂いた2年半前&1年前&3ヶ月前の3枚のシャツは、
首周りの寸法だけではなく、袖丈も、ほぼ同じ割合で短くなっていました。
それも、時代の古い順番に短く、、
もし裁断ミスであるなら、同じような割合ではなく首周りだけ大きいはず。
念のために、カフス周りや着丈も測ってみると、やはりほぼ同じ割合で短かったんです。
という事は、やはり洗濯による縮みだと考えるのが妥当で、
Fさんにその旨をお伝えし、2年半前のシャツのサイズで作り直した場合、
また同じように縮んだら、着れなくなると思いますが、良いですか?と聞いてみました。
今回、仮に気にされている襟だけを小さなものに取り替えたとしても、
また縮んでしまうと、首元が止まらなくなってしまいます。
これは難しい選択ですが、
縮んだ後を想定して作るか、最初にジャストサイズを作るか。
そう考えると、伸びる事を前提にキツ目を買うかどうか、靴を思い浮かべませんか?(笑)
そもそもFさんの場合、Fさんのご希望で、
首周りは若干ゆとりのある〝実寸+3センチ〟の型紙でリピートしてこられましたが、
その後シャツが徐々に縮むにつれ、Fさん自身が慣れられたせいもあって、
今回のように、真新しいシャツを大きく感じられたんだと思います。
僕もその辺りの慣れを考慮させて頂けば良かったのですが、
「前寸通りで」と仰るFさんに甘えていました。
今回の事で色々な事を学ばせて頂き、Fさんありがとうございました。
ちなみにFさんは、縮みや仕上がりに気を遣ってハンドプレス仕上げに出されています。
それでも、今回のようにネックで1センチ、袖丈で2センチ近く縮んでいました。
湿った状態(濡れた状態)で生地を引っ張って伸ばしもせずに
高温アイロンをかけると、極端に生地を詰まらせてしまう事があります。
またこれからの梅雨時期、タンブラー乾燥も縮みやすいですからご注意下さい。
もちろん生地によって縮みやすいものと、そうでない生地がありますので、
後は経験あるのみ、もちろん僕としても生地を選んで頂く際に、出来る限り伝えます。
マッセアトゥーラのシャツは裁断前に1着1着洗っているのですが、それでもこの結果です。
出来る限り、ご自身で洗ってアイロンをお願いしているのですが、
ご多忙で無理な場合、縮む事を前提に作るのか、難しいところではあります。