【2007年1月16~17日】

ブライアン氏とFさんと共に昼食を摂ってから、ホーランド&シェリーの総本山へ!
この繊細でエレガントなヴィクトリアン様式の建物も、
100年以上経っているそうです。
廊下に書かれたメモ書き、、
ミーティングルームのブライアン氏。
このミーティングルームは、わざと建物の北側に作られ、
変化のある南側の明かりではなく、北側の安定した明るさを取り入れてくれます。
来シーズンのサンプルです。
この中からセレクトされた生地がバンチとなって、
この、英国にあるピーブルスの町から、皆さまのお手元に届けられるのです。
希望の生地を伝えると、ブライアン氏が探してくれました。
まずは、バンチSAMPLEを作っている現場です。
ホーランド&シェリー社では、自社でバンチを作成しています。
以前は外注だったそうですが、あらゆる面において、自社作成にメリットがあるとか。
ホーランド&シェリーグループが抱えるネームとしては、
日本には3銘柄が入っています。(ホーランドシェリーNAME、ジョンクーパーNAME、
そして、マッセアトゥーラで取り扱っているインネスチャンバースNAME)
ほら、まるで印刷屋さんです。(笑)
バンチに綴じられている生地は、全て品番ごとにストックされています。
オーダーが入ると、こうしてカットされます。
カットされた生地は重量が測られ、明細と共にまとめられ、
出荷先(各国の代理店)ごとに梱包されます。
時差があるので、1日中フル稼働です。
日本の窓口はこの女性、ジャネット・ブラウンさん。
日本からのオーダーは全て彼女が処理し、彼女の指示で現場が動きます。
残念ながらこの後、彼女は2007年3月でリタイアされ、現在の担当は、男性に変わっています。
またいずれ、ご紹介できればと思っています。
過去のサンプルは、アーカイブとして全てストックされています。
右から極東担当マネージャー、ブライアン氏
ホーランドシェリー社チェアーマン(会長)、チャールズ・スチュワート氏。
この時は痩せていたのですが、何故かパンパンの僕。(爆)

そして、、ヘンリープールのMDを40年近く務めているFさん(以前の会社の大先輩です)
僕だけこんな格好で、ごめんなさいっ!
夜は、ブライアンの奥様もご一緒に食事を楽しみました。
日本だと、仕事に奥様もご一緒になんて事は少ないと思うのですが、、素敵ですよね。
ほんっと、楽しくて知的な奥様でした。
典型的なスコティッシュパブです。
アイリッシュパブとの違いが分からなかったので聞くと、
アイリッシュは、もっとごちゃごちゃしてるとか、、そんなもんなんですね(笑。
ホント、それが理由ですか?(爆)
散々飲んだ翌早朝、夜も覚めやらぬ間にホテルを出て、
世界遺産の街エジンバラを素通りして(涙)、激安キャリアEasyJetで、ロンドンのホテルへと戻りました。
これで、年始の2週間に渡る遠征報告は終わりです。
1年越しでしたね、、ごめんなさい。
こうして自分と関わりを持ってもらっている現場を見ておくと、
ただ単に、生地が手元に届いたり、頼んだ仕事が出来上がってきたりするだけではなく、
日々、全てを見渡せているような気持ちで仕事ができるから楽しいですね。お世話になった皆さん、ありがとうございました!



【2007年1月15日】

朝から〝湯ったり〟とバスタブにつかり、ラウンジでゆったりと朝食を楽しみ、
そんなご機嫌な朝で迎えたドネガルの1日。
ホテルまで、Mageeのスタッフが迎えに来て下さいました。
Magee本社までは車で10分程の距離、ドネガルの街の外れにあります。
本社は大きく分けて3つの建物、
デザイン・サンプル棟、織り棟、洗い棟に分かれています。

名刺交換の後、色々と質問を受けました。
ドネガルツイードについてどう思うか、年間の取扱量はどれくらいか、
どういう経緯で今日の見学に至ったのか、僕が並べる英単語で伝えるのは大変でした。

今回は英国のヘンリープールが取り扱っているロンドンの某羅紗屋さんと取引のある、
日本の某羅紗屋さんのアテンド、という複雑なルートで実現しました。

まずはデザインルームです。
シーズンの傾向を読みながら、
テキスタイルデザイナーがたくさんのサンプルを作り、指図書を作ります。
その指示書を元に、見本反が織られるのですが、
ここでもデザイナーと技術者の間で、入念な打ち合わせが行なわれています。
過去の生地は全て保管され、いつかの時には参考にされるそうです。
そう、ファッションは繰り返されますからね!(笑)
使う糸は全て外注しているそうですが、
それも全てデザイナーの指示で別注されているので、
マギーのツイードは、完全オリジナルという事になります。
こうして、多くの糸が品番によって管理され、ストックされています。
現在、工場にある織機はレピア織機とズルツァー(スルザー)織機だけだそうです。
※レピア織機=シャトル織機  ※ズルツァー織機=シャトルレス織機 やはり効率を考え、このレピア織機も、もうすぐ入れ替えるとか、、
効率を求めると品質が落ちないか?と聞くと、
織り出してからのスピードを変えないよう調整するので、
それまでの準備や故障して作業を中断したりするロスを減らすことで、
全体のスピードを上げて効率化を図るだけだから、「安心しろ!」と笑われました。

その後、洗いと
乾燥プレス工程へと作業が進み、
最後に検品されて完成です。この流れの中でも、
最近では、フィニッシング(整理工程)は外注する所が多くなっています。
途中の行程で、このブラシで起毛したり、他にも
細々とした工程もありますが、大まかには、こんな流れとなります。
大きな流れは、ツイード(紡毛)もウーステッド(梳毛)も同じような感じです。
ちなみにこのブラシ(起毛機)、昔は一般的に本物のアザミの実が使われていたと聞きます。
今でもフカキ毛織のカシミア最高ランクや、ビキューナ、グアナコの高級素材には使われているそうです。
みなさん作業中にも関わらず、本当に気持ちよくニコヤカにご対応下さいました。
手を止めて直接ご説明下さった方も何人かいらした程です。
感謝です、申し訳ありませんでした(汗)。

その後、15人ほど残るハンドウーヴン(手織り)のウィーバーのところへ連れて行って下さいました。

ここは工場の中にあるのではなく、
Mageeが契約したウィーバーの自宅で織られるそうです。
今回お邪魔したウィーバーも、40年近く織機を踏んでいらっしゃるそうです。
最も若い職人さんで30過ぎの方もいらっしゃるそうですが、
彼は特殊で、彼を除いて、ウィーバーの平均年齢は60歳を過ぎているそうです。
ここでも後継者問題は深刻そうでした。

シンングル巾(75cm)の織物を1反(約50m)織るのに25時間程かかるそうで、
これはダブル巾(150cm)に換算すると50時間かかる事になります。
低速シャトル織機で織れば2日で1反強ですから約6倍。
高速シャトルレス織機と比べると、約14倍です。
画像の左にあるキャタピラーのような連続プレートが、
緯糸の打込みを指示するパンチカード(デザインプレート)です。
これによって木製シャトルが緯(横)方向に走りながら、緯糸を1本1本打ち込んでゆきます。
Mageeでも、複雑な柄や手の温もりを重視した生地だけが
彼等の手によって織られるようです。
画像でボケてる部分が、上の画像の木製シャトルが走ってるところです。
足の動く速度より早いので、足よりもボケて見えてますね!(笑)
ツイードの中でもカラーネップの効いたチャーミングな表情がドネガルツイードの特徴ですが、
それも北の最果てのこんな小さな工房で、彼らが1反1反、織り上げているのです。
ほらね!
昼から急に雨が降り始めたのですが、
大西洋沿いの海岸線に連れていってもらいました。
最果てらしい雰囲気が、この雨のせいで余計に漂ってました。
本当なら見所が沢山あるので見て回りたいところですが、今回はそこだけ、、
それでも、どのような環境の中、どのような場所で織られているのか、
それが垣間見れただけでも良かったです。
画像は撮り忘れてました、、

今回の機会は、本当に沢山の方に支えられて実現したものです。
皆さん、ほんとうにありがとうございました。
そして、洋服好きの皆さん、ドネガルツイードを宜しくお願い致します。(笑)




英国で注目を浴びているエドウィン・ウッドハウス。
シーズンを通じて、オリジナルのザックリとしたスーツ地など、
クラシックな風合いは、日本でも浸透中。

特に夏モノのエアーウールは、
通気性に優れ、皺も入りにくく、皺が入ってもひと晩でサッと消えてしまう。
そして何より、バリッとした張りがあるので、仕立て栄えがし、
着ていくほどに味わい深い男の表情に変わってゆく。
そんな、いかにも英国らしい生地です。
そんな特徴から好みは分かれるところですが、
リピーター性が高い生地である事に間違いはありません。

柄も、全体にクラシックなモノが多く、
年齢を超えて、多くの方々にお勧めできる商品は、
シーズンを通じて、約450柄の中からお選び頂けるバリエーション。

生地のクオリティーごとに、専用の織りマークが用意されていますが、
僕は、こんな小さめの、控えめな物が好きです。



着て行くほどに身体に馴染んでくるスーツの再現と、
無骨さとモダニズムの融合によって生まれる
艶っぽい男らしさをキーワードに、
ヴィンテージ感漂う新たなスタイリングが生まれると確信しております。

と、羅紗屋のBB君が声高らかに納品してくれた生地です。

FRESCO(フレスコ)誕生100周年にあたる今年、
英国のマーティンソン社とのコラボレーションで復活しました。
FRESCOは29.5番手の双糸に29.5番手の単糸を撚り合せた450g/Mtr.の
肉感のある3PLY・WOOL地で、特に画像のブルーの色出しが最高!
下の画像、上の生地がそのインクブルーですが、
下の通常の濃紺と比べても色っぽい!
他にもこれだけバリエーションがありますので、
お好きな色柄で、100年前の着心地をお楽しみ下さい。
ちなみに、このFRESCOという名称はマーティンソン社の登録商標であり、
1907年にマーティンソン社が開発したハイツイストの原型ともいう
当時では画期的な春夏用の服地でした。

この生地に関連する内容は、以前にも書いておりますので
そちらも是非ご参考にされて下さいね。
他に、マーティンソン社の訪問記も書いています。



ヘンリープールを介して仕入れる〝acorn〟のシャツ地は純英国製です。
先日もご紹介させて頂いたように、発色が綺麗で、
もう少し色目を抑えた生地が多い中、クラシックなのに、こんな色目は珍しいですね。
織りにしても、シッカリした打ち込みで、柔らかなイタリア製とは少し違った雰囲気です。
マッセアトゥーラでは、生地を安定させる為に、
裁断前に洗って、乾かないうちにアイロンをかける(縮絨)ので、
生地の特徴やアイロンの掛け易さが分かるんですよ♪



彼の誕生日に、フルオーダーのシャツをプレゼントしたいから、、
といってお越し下さったYさんと、幸せ者の彼Hさん。
想像したより発色の綺麗なシャツ地を、楽しんでお選び頂きました。
オーダーって、こんなプロセスの全部が想い出になりますから、僕も嬉しかったですよ。
acornは、今では数少ない、純英国製のシャツ地メーカーです。
英国では有名なトーマスメイソンもアルビニ社の傘下に入り、
今ではイタリアで織られていますからね。
張りのあるシャツ地は、スーツ地と同じように英国らしさが感じられます。
毎回、裁断に入る前に洗っていますから、直接違いを感じます。
どれも英国らしい色柄です。
フルオーダーにて、是非お試し下さい♪


このスーツは、僕が7年前にヴィンテージFINTEXの生地で仕立てた私物ですが、
今までに、多くの方から褒めて頂いたスーツです。
このスーツを着ると、カミさんから「ちょっと色気づいてへん?」とも言われた生地です(笑。
何とも透明感のある〝インクのように深く透き通ったブルー〟なのです。

素材的には、3PLY(プライ)というマニア受けする生地なのですが、
褒めて下さった方はマニアではなく、この生地色と風合い、全体の雰囲気に対して、
純粋に〝素敵〟と思って下さった方たちです。
これを羅紗屋のBB君が、彼の熱き想いで復活させてくれました。
ただ彼の想いは、この色ではなく、3PLYのフレスコ素材に向けられています。
というのも、今回の素材は12色展開、、でも僕は、この色以外は見向きもしませんけどね。(笑)

実際の入荷は年末の12月となりますが、東京の方を中心に既に予約を頂いております。
ある程度の数は確保しますが、それでも数に限りがありますので、
ご希望の方は、先に生地だけのご予約をお勧めします。
余りにも好きな生地で、まさか再会できるとは思ってもみなかったので、
ちょっと興奮してしまいました♪(笑)

最後になりましたが、
フレスコとは、撚りの少ないポーラ糸を3本拠り合わせて(3PLY)平織りにした生地です。
詳しくは後日、これから作る新コーナーでいずれまた、、