大阪にある商売の神様、今宮戎前に店を構えられる
澤村萬壽堂本店にお願いしていた印章を、今朝、店を開ける前に受け取ってきました。
最初にお願いして以来10年、いつも澤村さんにお願いしています。
印章作りとスーツ作りには何かと共通点があるので、いつも興味深い話を聞かせて頂けます。
前にも一度、澤村さんの事を書かせてもらいましたが、今回は別の切り口。
印章もスーツも、材料と作り方で価格に大きな差があること。
*印鑑とは印影の事で、ハンコ本体は印章です。

・印材(印鑑を掘る材料)= 生地
・字入(印面に文字を書く作業)= デザイン製図
・掘り(印面を彫る作業)= 縫製

*こうして、文字の割り振り(バランス)を考えるそうです。


*一般的なコンピューターのフォントではなく、澤村さんは手で文字を描きます。
    特に複雑な文字や絵柄になると、
    彫れる人(服で云う縫製)はいても、それを描ける人(デザイン製図)が少ないそうです。
    ここで大切なのは、Aカラチェ二のカルロ氏も言う、「出来る出来ないではなく、
    出来たとしても、そこにクオリティーが伴っているかいないか」
なんです。


彫り(書き入れた文字を実際に彫る作業)は、縫製にあたります。


字入れにコンピュターのフォントを使うか、手で描くかで雰囲気が変わりますし、
彫りに機械を使うか手で彫るか、また機械で彫ったものを手で仕上げるかでも雰囲気は変わります。
この雰囲気の違いは価格にも反映し、印材の違いより、人の手間の掛け方の違いが、大きな価格の差となってきます。
人の手間の差(違い)を云う時、そこに合理化の差は無視できませんが、
人の手が生み出す物が尊いものである事に違いはありません。

スーツの世界も同じで、
同じ生地を使っても、仕立て方で価格差があります。
マッセアトゥーラでは実際に230,000円の差(シングルスーツ上下)があります。
製作時間の差で云うとおよそ70時間で、お客様にも仮縫着せ付けなどのお時間にお付き合い頂かねばなりません。
澤村さんと話して、忘れかけていた事を思い出したり、新たな気付きを頂いたり、、
時間が経つと忘れますね。意識の反復を怠っては駄目ですね(汗。
今日は久々に重い?話でしたね。お疲れ様です(苦笑。



ウエイト400gのコットンポプリン素材です。
かなり手強い生地ですが、着ていくにつれ、しなやかになりますし、
毛芯で極限まで柔らかく仕立ててありますので、型崩れではなくNさんに馴染んできます。


生地が堅すぎて、縫製全体もそうですが、
手星(ステッチ)を入れるにも、倍近い時間が必要でした。
良い感じで入って、Nさんにも気に入ってもらえました。中山君お疲れさま!
このスーツの雰囲気に、タイユアタイのセッテピエゲの柔らかな雰囲気が良く似合ってますね。


腰ポケットのステッチも良い感じに入りました。
ポケットに物を入れてもらえば、いい感じにプックリしてきますよ。
このスーツは5~10年後が楽しみです。お手入れと扱い方はキッチリ、そしてガンガン着て下さい。




台湾雑誌WATCHER

台湾の雑誌『WATCHER』の別冊『紳士高級品』の『紳士高級品連載Vol.31』に
マッセアトゥーラのジャケットをご紹介いただきました。

着る人の身体と気持ちを引き締める注文仕立ての極上ジャケット 2010年のこの連載で、
京都の老舗帆布鞄店の生地で仕立てた上着を紹介した大阪の「Masse Attura(マッセアトゥーラ)」。
同店は2012年11月に同じ大阪・梅田のHERBIS PLAZA 2階に移転。
高級感溢れる新たな店舗で、上質でスタイリッシュなスーツ作りを続けている。

もともと「Masse Attura」は、大阪に本社を構える大手生地商社が1999年に新規事業を募集し、
当時、同社の社員だった柳瀬博克さんが提案した注文製作の紳士服店がはじまりとなる。
この事業は順調に業績を伸ばし、やがて2003年4月に柳瀬さんは生地商社を退職し、
独立して「Masse Attura」を開店させたのである。

テーラー「Masse Attura」の特徴は、
何よりも着心地とスタイルの両立を重視する柳瀬さんの入念な採寸とフィッティングである。
実は私はこれまで「Masse Attura」でシャツは仕立ててもらったことがあるが、スーツは未経験だった。
そこで今回、たまたまイタリア製の麻生地が手に入ったので、これを「Masse Attura」に持ち込み、
上着を仕立ててもらうことにした。

仕様は基本的に柳瀬さんにお任せ。
伝えたのは「とにかく格好の良い上着を作ってください」ということだけ。
スーツや上着を仕立てる場合、あれこれと希望を言ってもいいが、重要なポイントだけ伝え、
あとはテーラーにお任せした方が、その店の独自性が強く出るのではないかと思う。
台湾雑誌WATCHER

こうしてできあがったのが、この茶色い麻生地の上着だ。
スタイルは基本的に柳瀬さんの得意な「クラシコ・イタリア」。
襟幅はやや広めで、三つ釦の中ひとつ掛け。
釦の素材は天然の象牙椰子で、植物性繊維である麻とは同じ植物同士で相性が良い、というのが柳瀬さんの説明。
ここにも彼の鋭い感性が反映されている。

また、袖の釦はふたつ。
クラシコ・イタリアの上着では、袖釦を4つにして重ね付けしたりすることが多いが、
ここはあえて百年前の上着に習ってふたつ釦を選択した。
この釦は実際に開閉可能な「本切羽」と呼ばれる仕様になっているので、
ひとつだけ外しておくことで注文服らしさを強調できる。
まあ、これをあまり強調しすぎるのは野暮なので、ほどほどにしておくことにしよう。

では実際に着用した感じはどうか?
これが極上。決して窮屈ではないが、程良く身体を引き締めて、美しい線を描く。
日本男性の大半は身体に合っていない大きめの既製服を着て、それで十分だと思っているようだが、
本来の紳士服とは着る人の身体に合わせて仕立てられ、快適な着心地を提供すると同時に、
その人の一番、格好の良い部分を引き出さなければならないと思う。
もちろん、私も決して理想的な体というわけではないが、
柳瀬さんに作ってもらったこの上着は、初めて着た瞬間から身体にフィットし、美しいシェイプを見せる。
これが本物の紳士服である。
台湾雑誌WATCHER

●キャプション
(1)ラベル
とても簡素な「Masse Attura」のラベル。裏地は表生地の茶色に合わせて金茶が選ばれている。

(2)袖口ボタン
象牙椰子を削って作られたボタンを採用。薄い茶色が濃い茶色の麻生地によく似合う。
この釦は実際に開閉できるよう仕立てられている。

(3)襟
やや幅の広い襟にはハンドステッチが入れられており、注文仕立てらしさが滲む。
上着の仕立て料金は、最もお手頃な価格で54,600円から(生地代別)。
スーツは73,500円から。


世界を北半球から南半球へと出張で回られるYさんから、
出張用の戦闘服を仕立ててくれ!とご依頼を頂き、あれこれ悩んだ挙句に、
暑い地域をインナーで調整する前提で、御幸毛織の透け感の少ないポリ混の清涼素材をお勧めしました。
御幸毛織ですから当然のこと低速織機で織られているので、なお更回復力に優れています。


上着には何も入れられないとのこと、柔らかく仕立てますが、
パンツには色々と入れられるので、シッカリとした仕立て方にしようと考えています。
7月のトルコ、オーストラリア出張までには完成させます! どんな戦闘服になるのかドキドキ楽しみです。




通常、クレリック部分には白のブロード(ポプリン)を使うのですが、
これだけ立体的な表情の生地なので、バランスが悪くならないように同じ生地の白を使いました。
今年大学に入学されたお嬢さんがお越し下さって、ネクタイを合わせてからKさん(僕と同い年!)にプレゼントされます!
シャツとの合わせ方をはじめ、ネクタイを選ぶポイントをあれこれ伝えさせて頂きました
次回、是非そのネクタイを締めてご一緒にご来店下さいね!



タッサー?いえいえ、もっと横畝の太い、ウールグログランのブラックフォーマルです。
ジャケットはジャストサイズで、パンツは太めでオーダーされました。


近づくと、もう少し生地感が伝わると思います。
一緒にオーダーされたシャツも、Yさんのお好きそうな雰囲気になりました。
襟型だけじゃなく、襟の高さや、生地感も考えて決めました。


2タックですが、股上が浅いので、スッキリしています。
Yさん、ありがとうございました! お伝えしたように、しっかとお手入れをして、
他のお洋服と同じように、末永く愛着ある1着にしていって下さいね。




日帰りで遠州織の産地(静岡県西部)に行ってきました。


伺った機屋さんで使われていた
織機のメーカーは、今は無くなったそうですが、
織機本体は’70年代迄に作られたそうで、元気に動いてます!
部品は、ストックを含め手に入っても、直せる人が減ってきたことを心配されてました。
ガチャコン、ガチャコン、ガチャコン、ガチャコン、ガチャコン、ガチャコン、、ずっと休まず働いてくれます。


今まで毛織物の工場では見た事がないのでビックリしたんですけど、
ヨコ糸がボビンに巻かれ、シャトルにセッティングされる、この一連の流れが自動化されているんです!
糸がなくなれば、ボビンは自動的にシャトルから外れ、ベルトコンベアで糸巻機まで戻ります。
また糸が巻かれ、糸が無くなれば新しいボビンがシャトルにセッティングされます。
更にビックリ!糸が無くなったボビンに糸クズが残ったり不具合があると、
糸巻機には戻らずに、違う経路を通ってエラー箱に運ばれる事。
それに関しては、人の手で解決して戻してやるそう。


ちなみに、横巾112センチの生地を1反(50メートル強)織るのに3日かかるのですが、
レピアだと1日に1反、エアジェットなら1日3反弱まで生産数は上がります。
低速織機で織られた生地は、ウールと見間違う様な風合いで、
オーダー用に出回っている中で見ないと思ったら、
国内外の有名プレタ向けが多いとか。


生地は、タテ糸の間にヨコ糸を打ち込んで織ります。
低速織機(シャトル織機)の場合ですと、
シャトルを使って穏やかなスピードでヨコ糸を入れますので、
タテ糸にテンションを掛けず少々緩んでいても、ヨコ糸は引っ掛かりません。
ヨコ糸を入れて次に入ってくるまで時間があるので、張っていたヨコ糸のテンションも緩みます。
一方、シャトルレス高速織機(エアジェットウォータージェット)では、
時速300キロ程のスピードでヨコ糸を入れるので、ヨコ糸自体もピンと張ってしまうし、
ヨコ糸が入る時にタテ糸に引っ掛からないよう、タテ糸にも強いテンションをかけて、経緯両方パンパンです。
入ったヨコ糸が緩む間もなく次のヨコ糸が入ってくるので、低速織機の時のような効果もありません。
このように書くと、低速織機の方が良い事ずくめのように思われるかもしれませんが、
それぞれに特徴があり、低速織機と高速織機の違いは、良いか悪いかではなく、
お客様の望まれる雰囲気に合わせ、どういった生地をお勧め出来るか、
それが店の力量だと思って日々の経験を大切にしています。


シャトルです。
半年で買い換えるそうです。
1個1万円!結構するもんなんですね!!


もう1件、掛川の機屋さんを見学させて頂きました。
今回の本来の目的は見学じゃなくプロジェクトです。カタチになれば報告しますね。
それにしても今日の2件。エルメス、ルイヴィトン、マイケルタピア、ジルサンダー、プラダ、凄い取引先です。
日本の物作り、、捨てたもんじゃない、、というか、凄すぎます!
プロジェクトで伺ったのに、勉強もさせて頂いて
本当にありがとうございました!!




Tさん、長らくお待ち頂きありがとうございます!
柔らかな手縫の雰囲気が、存分に生きてくる生地というテーマの中で
気に入って頂ける色柄が見付かって良かったです。着れば着るほど愛着の湧くジャケットになりました。
チョコレートブラウンとネイビーのチェック。先日紹介させて頂いたソラーロじゃないですが、
離れて見ると、独特の色合いをしています。先日のソラーロが夜の色気なら、
こちらのジャケットは昼の色気ですね(意味不明!?笑)。
Tさん、いつもありがとうございまーす!
奥様にも宜しくお伝えください




オーダー頂いたシャツは、
裁断する前に、一晩お湯で糊抜きをしてから、
製品にしてから少しでも縮まないように、洗濯機を使ってお湯で洗います。


その後ガス乾燥機で乾かして、どれくらい縮んだかを調べ、
規定値以下なら、この作業を何度か、規定値になるまで繰り返します。
既製服や一般的なオーダーの場合、裄丈が4センチも縮んだりするものもあるんです。


マッセアトゥーラで扱っているシャツ地には、そんなに目詰まりする(縮む)生地はありませんが、
それでも、製品にしてから少しでも縮まないように裁断前に縮ませておきます。
ジャケットの袖からシャツが出ないなんて事にならないように!
このピンクの綿フラノ、アクの強いストライプ、
規定値まで縮んでくれました。




マッセアトゥーラの創業当初から、
ずっとお付き合い頂いているHさんの今回のスーツは
ネイヴィー(経糸)+チョコレートブラウン(緯糸)ヘリンボーンのソラーロ
シルクが20%混ざっているので、その艶っぽさったら、こりゃもう反則の粋に達してますって!
Hさん、いつもエッチなスーツをありがとうございます(笑。