今日、ディレクターズスーツをオーダーして下さったYさんから、

12年前の成人式で着た着物を、今回の裏地に使って欲しとのご要望がありました。



ご親戚が東京で呉服屋さんを営んでおられるとかで、流石と思わせる色です。

何て表現すればいいのか、めったに見る事のない、かなり粋な色です。

僕の技術では、画像でそこまで再現できないのが残念です。



さらに裏地も、ブラックスーツと共地で作る

ベストの背裏に利用します。







ダイアリーを始める前の裏地ネタになりますが、

奥様のエルメスのスカーフや、ご自身で草木染されたシルクシャンタンを

張った事もあります。

他には、、自分で水墨画を描いて持って来られた方もありました。

そんな個性的な裏地、今回は久々なので楽しみです♪

クラシコイタリアなスタイルがお好みのWさんに

新しくスタートした〝ナポリクチュール〟Lineのファーストオーダーを頂き、

今日、仮縫いの補正をさせて頂きました。







Wさんがお持ちのカスタンジアのスーツをベースにバランスを取り、

仮縫いでイメージを微調整させて頂くことにしました。

実は、カスタンジアのスーツとマッセアトゥーラで作らせて頂いているWさんのスーツ、

両者のバランスは極めて近かったのです。



僕が、「ほとんど同じバランスですねぇ~」と云うと、

Wさんに、「俺って凄いやん♪って思ってるでしょ!」と云われ、

僕の性格を知り尽くされたWさんに、即座に見抜かれてしまいました。(笑)







生地は〝ドーメルTONIK〟で、イタリアンが大好きな色、アズーロのピンチェックです。

バッシバシに仕立て栄えする生地で、仕立て上がりが楽しみです♪


以前のダイアリーでお伝えしたシャツの〝2着目〟です。

ローンという透けた綿素材に、エンブロイダリー(刺繍)が入ったシャツ地。

前回からの変更点は、首のアタリを和らげるために台襟の内側に綿ブロードに替えた事。



カフスの内側にブロードを使ったのも、同様の理由からです。

また、襟の厚みを抑えるために、襟羽根の裏側にもブロード地を使いました。

いずれも好き嫌いの分かれる仕様だと思います。





プレタの場合、何着かサンプルを作ってから商品化して生産ラインに乗せますが、

オーダーはその都度ですから、皆さまに色々なご提案をするためには、

自らのこういった経験が、サンプル代わりになります。



高校時代から今の仕事につくまで、どれだけ高い授業料を払ってきたことか、、(苦笑)

別の機会で、当時オーダーしたものをご紹介させて頂きます。

これでまた、ネタが出来ました。(笑)






本日お渡し、Kさんのブラックスーツ。
通常、弔辞(喪)のフォーマルとして使う場合、
ダブルよりもシングル、そしてブラックベスト着用が正式な略礼服です。
それよりも格式高い準礼服なら、ディレクターズスーツですが、
一般的でなく、逆に目立ってしまう恐れがあるので、あまりお勧めはしていません。
また、ブラックスーツにステッチを入れている方や、
ベントを割っている方をお見かけ致しますが、正式に云うならアウトです。
フォーマルな服は、装飾性を避けなければならないからです。

フォーマルに関してはかなり詳細に規定があります。
全てを守る事は難しいにせよ、
最低ここまでは、というレベルは押さえておかないと恥ずかしい思いをする場面もあるかもしれません。
欧米諸国に比べで日本は、ルールをご存知のない方が多いように思います。
ですから、フォーマルウェアの採寸時間は、
こういったマナーまでお伝えする事も多く、時間がかかります。
ちなみに今回の襟は、襟巾もホドホドに、ゴージラインの角度と高さも控えめです。



柄が柄だけに、シルエットやディーテールは真面目にきちっと作ってます。

意外に、こんな柄物のシャツで、キッチリしたデザインの物って少なくないですか?

それが狙いですが、どれだけの方に分かって頂けるか、、(苦笑)

同じような柄が、あと1着分だけ在庫あります。








襟の雰囲気が気に入られたと云う、Oさん所有のバルバのシャツをサンプルにしながら、

襟をひと回り大きく、着丈を短く、カフをフレアに、

リデザインして仕立てました。

フィッティングに関しては、既に完成しているOさんの型紙をベースにしています。







リデザインしたポイントを簡単にお伝えします。



襟を立てて途中で折り返しても、

紙のように〝パリッ〟と折り曲がってくれるように工夫してあります。(後述)

今回Oさんが、最も意識されたバルバの襟仕様です。

ボタンの間隔も、第2ボタンの位置を通常より随分と下にして、

首元のボタンを外した時に胸元が開き過ぎないようにした、100%クールビズ仕様。(笑)



また、画像には写ってませんが、

袖ボタンを留めた時に、カフスがフレアになるように変更しました。。

それに、通常より着丈を短くしてゆとり量も削り、オーバーシャツ専用丈にしました。

打ち合いの柄合わせも、シッカリ合わせてあります。







この襟の拡大画像が、襟を通常の状態にしたところです。

この襟の高さ、襟のデカさがお分かり頂けますか?

ちなみにOさんが着られると、この襟腰の高さは気にならず、綺麗なんです。

首の短い僕が着ると、間違いなく亀みたいになります。(苦笑)







ここで、前述の〝紙のようにパリッ〟とした襟の理由。

襟・台襟・カフスに、『トップヒューズ芯』を熱圧着プレスしてあります。

画像は台襟に圧着したところでです。



これによって生地の質感に合わせた紙のような独特の風合いを出しています。

マッセアトゥーラでは通常、この紙のような風合いを嫌って、フラシ芯を使うのですが、

今回は、その雰囲気を逆利用して、よりシャープな雰囲気を狙いました。

ちなみに、トップヒューズ芯は熱耐性が低いので、

取り扱いには幾つかの注意点が必要ですから、しっかりお伝えしました。



自分の気に入った物を、更に自分の好みに昇華させ、自分だけの1着を手に入れる、、

こんなシャツ、愛着もひとしおですね。


今日はお渡しラッシュが続いています。(といっても4件で、これが1日の限界、笑)

4年のお付き合いになるFさんのフィッティング中に

英国より届いた裏地があります。

ロンドンのサヴィル・ローのテーラーの多くで使われている裏地です。



「何これ!?何で今まで言ってくれへんかったん?隠してたんちゃうの!」

  「いや、そういう訳じゃないんですけど、、

  Fさんはジャケットの裏地って総裏が好きですよね?

  だから熱がこもらないように素材はキュプラ100%にしてましたが、

  この裏地はレーヨン素材なんです。」

「いや、素材も大切やけど、そんな事より見た目が一番やで!俺こんな裏地好きやわ~」







この裏地を手に入れるルートが出来て、もう1年もなるのに、

素材が気に入らないからと云う僕の勝手な理由で、ほとんど提案してなかった裏地です。

これからは積極的に提案させて頂きますね♪



駄目ですね、自分の基準で勝手な判断をしては、、反省します。

さぁ気を取り戻して、今からもう1件、最後のお渡しです。












サンプルでお預かりしたシャツはバストダーツがなく、

男性的なイメージが強かったのですが、

今回はそれを基本に、全体のサイズを調整し、バストダーツを加えることで、

サンプルシャツよりは、少し女性的なラインに変更しております。


今日ジャケットのお渡しの際、シャツの2着目をオーダーを下さいました。

画像は、1着目のお仕立てシャツを着て頂いたところです。







この1着目をお渡した時に、「2着目も頼みます」との事でしたが、

特に急いでおられなかったので、

「一度着て頂いてから2着目にかかりませんか?」と提案させて頂きました。



実際に1日でも着て頂くと、気に入らないところが見えたりする事があるからです。

今回のケースでは、特にKさんからのご要望はありませんでしたが、

アーム付け根に少し皺が出てる事と、右肩下がりのせいで右脇腹に皺が出ている程度で、

肩周りから胸にかけての納まりは、かなり綺麗です。



1着目のオーダーの時に、「2着作って」と仰ったSさんですが、

一見無駄な事のようですが、こういう〝スロースタイル〟があってもいいかなって思います。



「俺は忙しいから早くしてくれ!」と云う方も結構いらっしゃいますから、

それはそれで、言って下さいね。(笑)

時間の流れまで、創り手の希望を叶えるのもビスポークですから。




今日Nさんが彼の為にとシャツをオーダーしに来て下さいました。

ビジネスの場を想定したものを、との事です。

僕はお2人とも知っていて、Nさんと彼(以後Kさん)のお好みが少し違う事も知っています。

今日のやり取りを、ブログネタとして暴露!させて頂くことをご快諾頂きました♪



(画像をランダムに差し込みますが、

    どれもホワイトonホワイトのドビー柄の中ではコッテリなものばかりです。)





Kさんは結構コッテリ系を好まれますが、Nさんはその逆です。

僕も結構コッテリ系ですが(笑)、今回のKさんにはアッサリ系をお勧めしたいんです。







何故か、、今回のようなビジネスの場では

身に付ける物を抑えた方が、Kさんご自身が引き立つから。

それだけ人間として存在感のあるKさんだからこそ、服で目立つのではなく、

逆に目立たないようにした方が、Kさんにとっては本当の意味でのお洒落だと思うから。

ディーテール(今回の場合はシャツの色柄)で目立つより、

さり気なく仕立ての良さ(=フィッティングの良さ)や、生地の良さを求めた方が、

ビジネスの場では、Kさんらしさを引き出せると思うからなんです。







本当に魅力的な人や真のビジネスマンは服装で主張せず、

一見普通に見えるけれど、自分に合ったスーツを綺麗に清潔に着こなしていると思います。

スーツで目立たなくても、きっちり着ているだけで充分に存在感があるハズです。

見る側の気持ちからすると、その人自身に魅力を感じれば、

その人が着ているスーツの仕立ても見るでしょうし、

その人の持ち物全てを気にかけると思います。







ただNさん曰く、

Kさんはまだまだガンガンお洒落を楽しみたい時期なので、

それはそれでKさんが自らそういう気持ちになるまでは押し付けはしたくないとの事。

この素晴らしい思いやり、僕も見習わなければ。(苦笑)







最後に僕の話で締めくくらせて頂きますが、

僕がアッサリ系な格好をすると、地味で野暮ったいオッサンになってしまいます。

そんな見た目を克服するくらい、人としての修行もしなくては。(苦笑)







人にはその人らしさがあり、その人がその洋服を着る場面を思い浮かべ、

どうすれば魅力的に見せる(魅せる)事ができるのか、、

今日も長くて、ごめんなさい。

ついつい熱くなってしまいました。(苦笑)