10年程前にオーダーされたスーツが
ご自身のイメージされていた雰囲気にならず、
ほとんど着ていらっしゃらなかったそうで、直して欲しいと。
海外の洋服は気兼ねなく承っても、国内のテーラーさんだと気が引けます。


もともとの肩傾斜は合っていましたから、
雰囲気を変えるめのパッド調整と傾斜調整で何とかなりそうで、
上襟までは解かずに済みそうですが、シルエットの問題などで背中心の調整は必要です。


イメージを変えるので、フロントカットも変更しなければなりません。


イメージと違う一番のポイントは肩周りの雰囲気との事でしたので、
垂れ綿など、かなりの調整が必要です。何とか思い通りになるように最善を尽くします!


ある程度お体には合っていても、今回のように、
出来上がりのイメージと違うというのは、コミュニケーションの問題だと思います。
承る段階で、お客様がご希望されるお洋服がどんなものか、お客様とのイメージのチューニングが大切です。
英和辞典で『Bespoke』は「注文の、誂えの」となっていますが、
お客様のご注文にお応えできていなければ、注文服ではないように思います。
テーラーによってスタイルはさまざまですが、マッセアトゥーラはプロダクトアウト型ではなく、
マーケットインの発想で今まで続けてきました。ただ最近その中でも少しはプロダクトアウト型があっても、、
そう思うこともあります。それは長年やらせて頂き、皆さん(マーケット)が求めている共通部分が見えてきたからです。



以前、フランスでご購入されたという
BOSS(セレクションライン)のカシミアジャケット。
雰囲気を消さないよう体に合わせ、更に着心地チューンナップをします。


さすがラインを大切にするプレタ、
見た目の雰囲気を重視して、肩線に皺が入らないように、
イセ込んだ後に、肩線前身側ばかりか、後身(イセ込み側)も接着芯で固めてあります。


雰囲気を変えない範囲で、出来る限り着心地を良くするように外せるものは外させて頂きます。
テーラード、それも特にイタリアでは、
そういう皺も手で作った匂い(証し)として『美しい』と捉えられますが、
デザイン(カッティング)が重視されるプレタポルテの服では、
そういった手の匂いを極力排除し、スマートさを求めた物作りがされている気がします。


 

随分と進んできて、もう少しです!
着丈を短くする為に、腰のポケットを移動しました。
このポケットは表側に付いているのですが、見返側(裏側)にも
このポケットよりも小さいポケットが付いているので、先にそちらを移動してから、
表の方を移動させました。革のトリミングが硬いので、太い針に替えて動力ミシンを手回しで縫います。


次に着丈(後丈)を短くするのですが、
バックベルト位置を上に移動したいリクエストですが、
これがまた厄介で、身頃の上にベルトが貼り付けられているのではなく、
後身頃の生地を上下に分断するように挟み込まれているので、上に移動しようとすると、
バックベルトよりも上の後身頃でカットし、ベルトから下全体を移動して上に移動しなければなりません。
画像のように先に背中だけ短くしたので、両脇は長いままです
これから両脇を短くして着丈を合わせ、フロントカーブへとラインをつなげます。


Tさんが体重を落とされた事と、スリムフィットにされたいとの事で、
今回は、かなり肩巾や身巾を詰めなければなりません。


身頃側のアームホールと、袖側のアームホールが合わなくなるので、
袖側の線を引きなおして、見え方と着用感せめぎ合いの中でバランスを考えて袖を付けます。


肩巾や上胸巾を詰めたので、
ガンパッチも、バランスを考えてサイズ変更しました。(まだ、解いた後の糸の縫い目が残っています)
最初から作るより、手間は数倍かかる事になるのですが、Oさんが愛着をお持ちの
ジャケットですから、やるならトコトンやる!精神で頑張ります。


あと、もう少しで完成です!
Oさん、長らくお待たせして申し訳ありません!!



スーツやジャケットはマッセアトゥーラ
カジュアルはロロピアーナと云うKさんのジャケット。
マッセアトゥーラ立ち上げ当時から14年目のお付き合いになります。
最近、体を鍛えて上体(胸周り)が大きくなり、ゴツく見えるのが嫌だとおっしゃり、
肩巾を詰め上胸巾を狭く、それに伴いアームホールやバストなども調整をさせて頂きました。
サイズが特別大きかった訳ではなりませんが、ご希望の見え方に調整するために、線を引きなおしました。

ストームシステムで使い勝手も良く気に入っているので、
気になっていたバックベルトの位置や袖の形状、
その他も色々、、この際!と云う事です。
お時間かかってごめんなさい。


着ておられるところを撮らせて頂くのを忘れましたが、随分と変わりました。
体重で5キロは減って見えます。肥えられた訳じゃないのですが、
体を鍛えていらっしゃる方でも、スーツや洋服はスマートに見せたい方が多いです。
とても気に入って頂けまして、追加でロロピアーナ3着、それにニットもお預かりさせて頂く事になりました。



以前お伝えしていた洋服が出来上がって、今日お渡しでした。
肩巾だけじゃなく、上胸巾も沿わせました。
肩の傾斜角も変わってきていてたので、現状に合わせました。
使っている糸、針目もオリジナルに合わせて、雰囲気を全く変えずに縫いました。
もちろん、いつものことですが、縫ったのは僕ではなくて技術の中山君です(笑。お疲れさまでした!


やはり15年すると、少しずつ体型も変わります。
首の付け根に筋肉がつくと、傾斜角は撫肩になりますし、逆に
筋肉が落ちると、結果として怒肩になりますから、角度の調整が必要になります。
もちろん誰でもじゃなく、体を鍛えられていた方がトレーニングを止められたり、逆に始められたり、、
すると段々、体に合わなくなってきます。愛着のある洋服だけに、特に今回のような人の手で縫われた高価な洋服など
きっちり合わせて、こうして新しい息吹を入れてあげれば、また今から何十年と着て頂けます。
プレスも雰囲気を壊さないように、全体にスチームを入れさせて頂きました。
Tさん、楽しい仕事をさせて頂きありがとうございました。
中山君は悶々としていましたけどね。




Oさんから、古き良き時代の?(失礼!)大切に着てこられたラルフローレンのジャケットをお預かりしました。
雰囲気も質感も、Oさんご自身のラルフローレンITEMの中では最高ランクだそうです。
濃厚な作り込みがされていて、今の物作りとは全然、違いますね。
どんどん手の込んだ物作りが出来なくなっています。
世の中から、なくなってきています。


僕もラルフローレン歴35年です!(笑。
この質感、大学時代に初めてアメリカに行った時に買った
ラルフローレンに似ていて、人の手を濃厚に感じる、とても手の込んだ作りです。


今回のお直しは、全てが連動しているので、
ほぼ全部バラバラにしなくてはなりませんが、全部を解くと、
作業効率的には良くなりますが、元の縫いの雰囲気とかが分り難くなるので、


ある程度を残して解きました。といっても、7割方は解いていますが、、
まずは糸ですが、色だけではなく、光沢感も揃えないと、縫った時に浮かび上がりかねません。


着丈もバックベルトを4センチ上に上げるのですが、このベルトがまた厄介で、貼り付けではなく切り替えてあるんです。
なので着丈を詰める、、と云うより、ベルト部分で解いて、ベルトから下と一緒に全体に上に移動します。
すると、両脇が長く残ってしまいますから、長さを合わせる為に4センチCUTします。
前端は2.5cmカットに留めておき、前傾斜をつけることにします。
とても難解な仕立て直しですが、燃えます(爆。
パズルを組み立て感覚が楽しいです。
楽しみにしてて下さいね!





5~3年着られたシャツの襟とカフの取り替えをさせて頂きました。
大切に着て頂いてありがとうございます!
取り替えた襟とカフも、何かに再利用して下さいね。
僕なら、、今だと店のフローリングのオイル引きに使うかな?(笑

昔、おばあちゃんが、使っていたタオルが悪くなると、切って縫って雑巾にしてました。
物を大切に、思い出を大切に、、使い捨ての時代だからこそ、日本の勿体ない文化を思い出します。
費用的にも、取り替え代を足して2で割って、1枚換算すれば、プレタ(既製)のシャツと似たような金額になります!
僕が高校時代に買ってもらった靴も、親からこう言い聞かせられました。
そういう事を教えてくれた祖母や親に感謝です。


Iさん、これからまた同じだけ使って頂けると思います。
3回目は微妙ですが、家で洗って頂いているので、2回目は全く大丈夫です。
いつもマッセアトゥーラのシャツを大切に洗って頂き、着て頂き、本当にありがとうございます。



1998年にオーダーされたジャンニカンパーニャのスーツの調整を承りました。
肩巾を詰め、傾斜角を微調整し、胸巾も調整します。


洋服の持つ雰囲気を変えないように心がけて縫います!(縫うのは中山君です笑)
肩パッドも一旦バラして、Tさんに合わせて作り替えます。


もう少しで、今のTさんに合った洋服が完成します。
抜群の着用感に生まれ変わりますから、Tさん、楽しみにしてて下さいね!!




10年来のお付き合いをして頂いているTさんから、鞄に小袋を付けて欲しいとのご依頼です。
黒い鞄に、Tさん会社で織っておられる生地を使って小物収納を付けました。
片方は1コンパートメント、もう片方は2コンパートメント。
これで、鞄の中で、
小物がゴチャゴチャ散らかりませんね。
それにしてもこの色、Tさんらしい艶やかな組み合わせ♪ 
鞄にポケットを追加する



以前ご紹介させて頂いたコートが、仮縫いを経て、ようやく出来上がりました。
肩巾で14cm(仮縫時から更に5cm詰めました)、バストが20cm、ウエストは28.5cm詰めています。


袖付けが特徴的な15年ほど前のコートで、
画像から、どこのコートか分かる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
前身はセットインで、後身頃はドルマン袖になっていますので、線の引き直しが大変でした(汗。


もともとの寸法だと、バストよりウエストのサイズの方が小さかった(細かった)ので、
ウエストを細く見せようとすると、アームホールが深く、ここも線の引き直しが出来なかったので、
身頃だけじゃなく、バックベルトでも絞ることにしました。
着て頂くと、本来このコートが持つ雰囲気(ドレープ感)を損なわず、
今の時代に合ったウエストシェイプなコートに仕上がったんじゃないかと思います。


オーダーを頂いてから、仮縫いをし、出来上がりまで半年以上かかりましたが、
Aさんの、「捨てるのはもったいない。新しいものを買うくらいの費用がかかっても直します」という
お気持ちを大切に、しっかり取り組ませて頂きました。
Aさん、いつもありがとうございます。