イタリアを代表するラニフィーチョ(機屋/英語ではミルと言います)
VITALE BARBERIS CANONICO(通称カノニコ)の本社を訪問、見学させて頂きました!
今回の視察訪問は、
いつもお世話になっているボローニャの生地マーチャント『ドラッパーズ』社の社長
ドメニコ・ロッリさんにお手配をお願いし、実現しました。
訪問当日の朝、
ミラノでレンタカーを借りました。
アウトストラーダを1時間ほど走り、降りてから今度は
向かう方向にアルプスの山々を見ながら、のどかな風景の中を走ります。
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少しずつ山間に入り、川沿いの道、車を走らせると、
アウトストラーダを降りてから20分ほどで同社に到着します。
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イタリア毛織物の一大産地である
ビエッラのプラトリヴェロに広大な敷地をもつ同社。
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毛織物に携わっていた事実を確認できる1663年当時の記録が残っています。
1863年には、
紡績から仕上げに至る全工程を自社で行うようになり(一貫房と呼びます)、
その後もどんどん進化を続けた同社は、
1910年(ちなみに大阪の市電は1903年に開通)には、
工場(織布工程)を電気によるフルオートメーション化させる事に成功しています。
その後も同社の生産体制(一貫房)は継続され、
今では最新鋭の機械によってオートメーション化されています。
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今回の訪問で特に印象的だったのは、
今まで訪問した機屋さんと比べて明らかに静かでクリーンな環境。
そして働く人数が圧倒的に少ないことです。かなりの工程でオートメーション化が図られ、
デザインなど知的な仕事だけを人間がしている印象です。
労働者や環境への取り組みが評価され『欧州労働安全衛生機関』に表彰されたと聞きました。
また、世界に販路を拡大する同社は
現在年間800万メーター前後の高級紳士服地を生産しており、
その80%程が海外に輸出されているそうです。(オーダースーツに換算すると約300万着!)
フランスやイタリアの超高級既製服や、世界の注文服店が同社の顧客です。
最近では自社名のブランド化にもチカラを入れているそうです。
そのブランディング戦略の一環として、
フェラーリ社へ、オーダー用シートの生地を供給しているそうです!
また、
プロモーション用のノベルティーも豊富で楽しませてくれます。
イタリアらしいお茶目なオリジナルのチョッコラート。
他にも同社の生地を使ったピンクッションや
携帯用ショッピングバッグや靴袋など、
見学に来る者を引き付ける仕掛け
ありがとうございました!
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実際の工場内をランダムに案内させて頂きます。
原毛は、オーストラリアにある同社の提携牧場から送られてきます。
洗毛(刈り取った羊毛に付いている脂分や汗、糞など、
土砂などを綺麗に洗い落とす工程)が終わった状態でパッキングされています。
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下の画像、先染め中でも手間のかかる
TOP染色のひとつ『ビゴロ染色』と呼ばれるものです。
訪問話からそれますが、こんな機会も滅多にないので簡単に説明しておきますね。
これ、糸になる前の綿(わた)を引き伸ばした状態(スライバー)にプリントしているんです。
プリントされたシマシマのスライバーを、ほぐして混ぜ合わせることで、
全体を染めるより、均一で優しい表情のグレーになります。
プリント量の多少でグレーの濃淡を調整します。
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これらの羊毛を使って、工場内で紡績(糸を作る)されます。
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圧巻の染色釜。ここは染色工場じゃないですよ!
この規模からして、同社の織布工場としての規模が分かりますね。
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はい、染め上がりました!
これから蒔き直しなど、幾つか地味な工程を経て
いよいよ生地が織られます(織布工程)。
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同社の生地は
コストパフォーマンスに優れています。
生産量が圧倒的に多いので、
織布にもっとも手間のかかる成経工程がまとめられます。
他社と比べて圧倒的に少ないボディ(糸の種類、織り方が同じ物の呼称)で
多様な柄を反多く作れ、コストを抑えられるのです。
生地は経糸を引き揃えて、横糸の色や織り方でデザインをが変えます。
そのため、経糸をまとめて作っておけば、随分と効率が計れることになります。
これらの効率化は、同社にとってファッション性と反比例するどころか、
逆に自社一貫生産だからこそ、物作りの細やかな対応が可能となり、
ファッション性も高くなり、そこが同社が評価される理由だという印象を受けました。
販売力があるから、生産できます。
販売力があるということは、それだけ顧客の支持を集めるからです。
そして何より、同社は「紡績工程」を自社で抱える一貫房です。
また工場内を見て回ると、
そのメーカーのフィロソフィーがよく分かります。
同社の織機には全てカバーが付けられ、運転中は閉じるようになっています。
これは従業員の聴力(織機の運転音は凄く大きい)と安全を確保するためのものだそうです。
従業員に優しい会社、こういった点も
働く人のモチベーションの源泉となっているのでしょう。
こちらは、2014年に改装されたデザイン室です。
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そして、
デザイナー室の奥にある扉を開けると、
バーカウンターのあるサロンスペースがあります。
生地棚にはCANONICOの生地が美しく並べられているんです。
大きな取引先を迎えてのパーティーなども、ここで開かれるのでしょうね。
さらにその奥には、
湿度が保たれたアーカイブ(生地見本)ルームがあります。
同社の過去のコレクションに加え、
伊、英、仏、墨から集められたコレクションが約2,000冊、これは圧巻です。
最古のものだと、1879年に編集されたそうです。
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これらのアーカイブは、
新しいデザインの参考として、実際にデザイナーが使っています。
ただ将来的には、
この資料のデジタル化が進んでゆくと、
手に触れることさえ出来ない歴史的な資料になることでしょう。
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今まで訪問した生地作りの訪問記は他にも書いています。
よろしければ、こちらもご覧下さい。
Magee/ドニゴールツイード① → こちら
Magee/ドニゴールツイード② → こちら
Edwin WoodHouse → こちら
Martin Sons&Co,Ltd. → こちら
Hudders Field の賃機屋 → こちら
Bateman Ogden → こちら
Holland&Sherry① → こちら
Holland&Sherry② → こちら
Ehglish Oak Mills/Dobcross → こちら
Acorn/シャツ地 → こちら
Idea Bierra/生地の見本市 → こちら
最後に、、
同じビエッラにあるピアチェンツァ社が1623年に毛織物商として創業、
1700年代に生地の生産を開始したとされますので、
カノニコ社が、現存する毛織物商として最古参であることは間違いないようです。