数年ぶりにお客様が文章を書いて下さいましたので、ご紹介させて頂きます。
D.K.さま、今回ばかりか、いつもありがとうございます!
不惑を迎えた私は、残された日々を価値的に過ごすために、
仕事から生活の隅々まで点検しはじめた。
そこで、ワードローブの再構築を思いつく。
「これまで着ていた物が、本当に似合っていたのか」
ファッションアドバイザーとして誰かに任せてみようと考えた。
ラルフローレンが流行り出した10代はアメトラ、ハケットが日本に上陸した。
20代はブリティッシュトラッド、そして30代にはクラシコイタリアの魅力にやられた。
雑誌やネットなど、いろんな情報をたぐり寄せていくなかで、いくつかの候補に絞っていった。
その一つが、どんなスタイルにも対応できそうな「マッセアトゥーラ」だった。
最初の電話は今も忘れられない。
マシンガンのように、専門用語を浴びせられた。
一瞬ひるんだがピンと来た。「この人なら私の要望に応えてくれるかもしれない」
しばらくして店舗に足を運んだ。驚くほど広くて深い知識は、
柳瀬氏の服への愛だと受け止めた私は、「ワードローブ再構築」を託すことにした。
あれから、数年が過ぎた。再構築はまだ道半ばであるが、あの時の判断は正しかったと思っている。
「これが正しいフィッティングだったのか」
「こんな色が似合うのか」
加齢と共にいつしか固まり始めていた概念がリフレッシュされている。
話は初訪問に戻る。
最初に作ってもらったのは、ネイビーのジャケット。
魚釣りというものはフナに始まりフナに終わるという。男の服なら、やはりネイビージャケットだろう。
大学の入学以来、ワードローブのセンターはネイビーブレザーだ。
羽織ってフィッティングに驚いた。軽い。
カーディガンのようだ。しかし、肩は構築的に仕上がっていた。
今やヘビーローテーションになってしまった。
二着目は、ネイビースーツ。
色は、ミッドナイトブルー。夜間の灯下では、黒に見えるつやのある色だ。
この時は、パンツのフィッティングが気に入った。
ゆとりがあるのに細く見えるものの、流行のような軽薄さがない。
中年の男に似合う絶妙な太さが気に入った。ジャケットも更に洗練された感がある。
どんな場所にも自信を持って臨める一着となっている。
三着目は、グレーフランネルのスリーピース。
「グレーフラノの男」。だれだってあこがれるだろう。
しかし、私はフラノのゴワゴワ感が少し苦手だった。すると柳瀬氏は、
カシミアが入ったイタリア製のフランネル(オルメッツァーノ)の生地を勧めてくれた。
柔らかさと、少し青が入ったグレーの色合いに一目惚れ。できあがったスーツは30代までの物より一段階明るい。
これ以降、いくつかのスーツやジャケットを作ったが、色目は明る目になっている。
似合う色が分かったことに感謝している。
秋冬用のネイビージャケットを相談した時、ネイビーブルーの生地を用意してくれた。
好みのヘリンボーンだったため、即決。仕上がった時、妻からほめられ、正直嬉しかった。
心なしか二人の間が近づいたように感じた。たかが服、されど服である。
また、春夏用に千鳥格子のスーツを所望した際、黒ではなく紺と白の格子柄を用意してくれた。
明るすぎないかとちょっと勇気が必要だったが、今ではお気に入りの一着となった。
新緑のまばゆさに映える色柄は、足取りを軽くしてくれている。
柳瀬氏のホームページを見ていると、普通の職業に就く人だと驚くことがあるだろう。
花札のような柄のジャケットや、蛍光色のコート。
芸術的に感性を発揮しながら楽しんでいるが、それは一面に過ぎない。
実際は、極めてオーソドックスなスタイルの洋服を、絶妙なサイズ感と色で作ってくれる。
今はただ、私のワードローブに蛍光色のスーツが加わらないことを願うばかりである。
2013年7月4日
柳瀬より・・・
D.Kさん、いつも楽しい会話、
ためになるアドバイスありがとうございます。
奥さまとの関係性にまで貢献できた?ようで嬉しいです(笑。
そして最後の一節を読ませて頂いて思ったのですが(次がその部分の抜粋です)
> 柳瀬氏のホームページを見ていると、普通の職業に就く人だと驚くことがあるだろう。
> 花札のような柄のジャケットや、蛍光色のコート。
> 芸術的に感性を発揮しながら楽しんでいるが、それは一面に過ぎない。
> 実際は、極めてオーソドックスなスタイルの洋服を、絶妙なサイズ感と色で作ってくれる。
考えれば当然のことですが、確かにビックリされると思います。
自分が伝えたい事と、相手に伝わっている内容は明らかに違うと云うことですね。
いつも「着たい色と似合う色は同じとは限らない」と言ってるのに、自分のことになると気付かない(汗。
今後とも、気付きのヒントを下さい。
少しずつですが、納得したところから意識して変えてゆきます。