【2007年1月10日】



年初に行ったピッティUOMOでは、初の特別展が開催されました。

その特別展の名前は、先日紹介させて頂きました本、、

『The LONDON CUT / Savile ROW BESPOKE TAILORING』 にもなっています。



日本ばかりではなく、世界的にもビスポークブームのようです。

先日7月5日、パリの英国大使館で、この特別展のミニチュア版も開催されました。



イタリア国内でも、この特別展がテレビ放送されたり、また、

イタリアのサルトの間でも、英国のビスポークテーラーに感心が集まっているようです。

この特別展の最終日にも、ナポリのサルトが団体でやってきたくらいです。

まぁ、僕たち日本のテーラーが、イタリアや英国のテーラーに興味を持つのと同じですね。



会場の入り口で携帯電話で話す、ハリソンズのブキャナン氏です。

恐らく、ヘンリープールのアンガス氏と、今夜の打ち合わせでしょうか。(内緒!爆)

ハリソンズ・オブ・エジンバラは、

後にエジンバラ市長となるジョージ・ハリソン氏によって創設された名門マーチャントです。





ヘンリープールのブースです。

チャーチル卿の洋服(復刻)が展示されたり、(マシンガンを持ったチャーチル卿!

著名人(全て故人)の本物の型紙が展示されていました。

顧客台帳には、昭和天皇や吉田茂氏、白洲次郎氏のものもあります。

ちなみに使われた生地は、チャーチル卿が好んで着ていたというストライプです。

この生地は、ロンドンのヘンリープールの企画で復元され、

日本でも、このA/Wに1反限定で注文が可能です。





こちらは、アンダーソン&シェパードのブースで、

ロンドンの作業場を復元しています。





会場内では、色々な著名人の型紙が展示されていました。





アンダーソン&シェパードのマシューズ氏が熱心に説明して下さったのですが、

恐らく3割程度しか理解できてないでしょう。(苦笑)





この2人組の紳士、いかにも英国人らしい!

特に右の紳士、、ダブルのチェスターフィールドですが、

毛足の長いビーバー素材を使い、上襟とカフには何と何と!獣毛が、、

恐らくモヘアだと思うのですが、どうでしょうか。

今回の出張で、イタリア人を見慣れた目には、彼らは全く異質のオーラが!





会場内をヴーヴ・クリコ(曖昧!)と、パテ&クラッカーを持った彼女達が巡回?してました。

恐らく、、ヴーヴ・クリコのデモンストレーションだと思います。

ちなみに、彼女達は全員がイタリア人でした。

あ~★&△$○%■#?☆すっかり酔っぱらってしまいました。(苦笑)





この後、フィレンツェ市内での約束を済ませ、

ESスターでミラノへ向かいました。






今日、悲報が届きました。

ラッジョ氏が亡くなられたそうです。

僕が最初に仕立てをお願いした時も、氏の体調は優れず、

出国前の状態では、無理と聞いていました。



ところが、僕がナポリに着いた夜に電話があって、

今なら状態も良いとかで、急遽採寸してもらう事になったのです。

そして奇跡的にも、、諦めていた機会が訪れたのです。



今、僕の手元には氏が裁断し、仕立ててくれたジャケットがあります。

このジャケットには、色々な想い出が詰まっています。



ラッジョ氏が、「お前のフィロゾフィーまで表現する洋服を仕立ててやるよ。」と言って

出来てきた、このジャケット、、本当に愛着があります。

ラッジョ氏との思い出を胸に、大切に着続けます。



ナポリでは名サルトと囁かれたラッジョ氏の栄光の人生を讃えると共に、

心から、、ラッジョ氏のご冥福をお祈りいたします。










今日、Hさんから頂いた、ロバート・ジョンソンのブルース歌詞集です。





ロバート・ジョンソンについて、僕は詳しくありませんが、

この本を取り上げた理由については、

製本のコダワリについて教えてもらったからです。



表紙より背表紙を薄くすると、本が綺麗に見えるそうです。

その背表紙が、丸くなっているかフラットかは好みだそうですが、

それでも、薄い方が間違いなく繊細で上品な面持ち(雰囲気)になるそうです。



本をそんな風に見た事がなかった僕にとっては衝撃的で、

これでまた、自分の気付いてなかった物の見方を知る事ができました。

Hさん、本を見る新基準を教えて頂いてありがとうございました!

あっ、もちろん本も、どうもありがとうございました。(笑)



これからも、素敵な書籍を出版し続けて下さいね。






年初に行ったピッティUOMOで貰い損ねた本だったのですが、やっと入手しました。

貴重な資料になりそうな内容が書かれ、愛蔵本になりそうです。

といっても、ペーパーバックですけどね。(笑)







店内に置いてますので、是非ご覧下さい。

ロンドンのサヴィル・ローや各テーラーの歴史、概要が書かれています。



この本はピッティUOMOの特別展として開催された

The LONDON CUT / Savile ROW BESPOKE TAILORING の記念出版本です。

この特別展は、ピッティUOMOの開催会場、バッソ要塞ではなく、

サンタマリアノベッラ駅に近い、別会場のピッティー宮殿で行われました。

今回はヘンリープールも招待され、

日本からの来客の為に、先輩のF氏がアテンドに回られました。



あっ!最近、海外通信を全く更新してませんでした~

そろそろしないと、全部ご紹介する前に次の出張に出てしまいそうです。(苦笑)






今日は朝食前、年初に行ったイタリアで採寸してもらったジャケットの仮縫でした。

その仮縫後、朝食でテーブルを囲みながら質問してみました。



「なぜ、この仕事を続けられるのですか?」

彼は初めに、「ベッラ ドマンダ(綺麗な質問だね)」と言って、こう続けました。

「お客様の服を創っていると、1着1着満足感を得られるんだ。」



建築家で例えるならば、それは公共物のような大きな建物で喜びを感じるタイプと、

住宅のように、より〝個〟に密着した仕事が好きなタイプがあり、

彼は、紛れもなく後者のタイプだと思います。



彼と別れた後、今日はお2人の採寸。

今度は僕自身が、事知れぬ満足感を得る事ができました。

結果ばかりではなく、そのプロセスからも満足感を得ることができる仕事。



今日は七夕、、「この仕事を一生続ける事ができますように!」

いつまでもこの気持ちが変わる事はないでしょう、、

そんな仕事に就けて、僕は幸せです。






Sさんの色使いは、いつもパーファクトです。

隙がないというのではなく、ハズシ方までパーフェクト。

いつも勉強させて頂いています。

一朝一夕で身に付くものではない筈ですから、思い切ってSさんに聞いてみました。

色々と話を進めると、理由が見えてきました。

子供の頃から、日常的に着物を楽しまれるご家庭に育たれたそうです。



日本には、独特の〝侘び寂びの色彩文化〟があります。

天然染料(草木染)の色彩は限られるため、

同じ植物染料の濃淡で中間色を作り、

そこに侘び寂びの〝枯淡の美学〟が育まれてきたと考えられています。



どの日本人のDNAにも本来、

微妙な色を見分ける能力が流れていると思います。







今日のSさんの色彩は、まさ侘び寂びの感覚。

タイは、日本で最も古くから伝わる黄色と言われている「刈安色」で、

リバーシブルで組み合わせられる色は「萌黄色」です。

草木の秋色と春色という絶妙な組み合わせ!流石はエルメス!って、そんな事より、



このジャケットの色はまさしく「勿忘草色」です。

日本を代表する初夏の色です。

そして組み合わされるチーフの色は「練色」、これまた日本黄色の一種。



全体の色調としては落ち着いているのに、躍動感が感じられるのは、

黄と青という補色のせいだったのです。

言葉で説明する事が難しいくらい、絶妙な〝組み合わせ〟と〝ハズシ〟が存在します。



色のプロが説明すれば、もっと分かり易いんですけどね、、

僕も、もっと勉強しないといけませんね。(苦笑)






フリッツ・ハンセンが不定期に刊行する雑誌〝REPUBLIC〟があります。

その最新号にフリッツ・ハンセン社のCEOヤコブ・ホルム氏のコメントがあります。



『変化が求められる時代だからこそ、やすらぎを。』



エッグチェアのオリジナルは、

建築家でもある、アルネ・ヤコブセン氏が1958年に、

コペンハーゲンにあるSASロイヤルホテル設計の際にデザインした椅子です。

なんとも「やすらぎ」を表現した〝リラックスポーズ〟ですね。




彼がスウェーデンのアイスホテルに泊まってきた体験をきっかけに

「やすらぎ」について書かれています。



日々の生活は多忙を極め、グローバル化は加速する一方。

絶えず変化していくことを求められ、

仕事とプライベートの境界も曖昧になっている。

このような時代だからこそ、自分なりのオアシスが欲しい。



その環境は、彼がアイスホテルで過ごした氷点下5℃の部屋にある

トナカイの毛皮の上で寛いだ時に感じた「やすらぎ」そのものだったそうです。

日々の生活の中で、どうやって安らぎを得るのか、、

また、そういった時間をどうやって作るのか、が必要です。



マッセアトゥーラは、というか僕は、、

皆さまのお陰で、日々寛がせて頂いてますけどね。(笑)

もちろん皆さまも、店内の名作椅子でお寛ぎ下さいマッセアトゥーラ!(爆)






今日お渡しのTさん、出来てきたスーツを見るなり、

「スーツだけ見たら、エグゼクティブな雰囲気プンプンですよね!笑」と。

「仕事で世界最高品質の物を売っているから、クオリティーの低いもの、着れないですよね。」



さらに、Tさんが続けて仰ったのは、

「ブランドに頼らず、自分基準でクオリティーの高いものを持ちたいですよね、、」

「中途半端なお金のかけ方をせず、メリハリのある使い方を、、」

「少しづつ、良いものを買い揃えてゆきたい。」



今まで仕立てて頂いた何着ものスーツ、

いつも、決して主張するスーツを好まれないTさんですが、

クオリティーの高い生地を、クオリティーの高いライン(シルエット)で仕立てているので、

見る目を持った方には、十分主張するスーツになっていますよ。(笑)

もちろん、主張の意味合いは全く違いますけどね。







これって昨日の話題と共通しますよね。

でも確実に、ここ数年でスーツに対する意識が変わってきているように思います。

制服スーツから、本来のスタイルに、、スーツの復権です。



Tさん、7月のアメリカ出張、、

今回のスーツで、バシッと決めてきて下さい。

これまた写真を撮らせて頂くのを忘れたので、Yさんのスーツで失礼します。(笑)






今日採寸をさせて頂いた2人の方のお話です。



働き出して、今までずっとオーダーされてきたと仰るTさんですが、

仕事で目上の方と接する機会が増え、改めてスーツに対して気になりだされたそうです。



最近、Tさんのように〝おしゃれをする為〟ではなく、

相手に礼を尽くす意味でスーツを考えられる方が増えてきたように思います。

年齢も、30歳を越えた辺りの方が多いです。



スーツで主張するのではなく、

相手に失礼のないようにきっちりスーツを着たい。

マッセアトゥーラのブログを見て、この店ならそんなスーツを作ってくれそう。

だから、、「トータルで教えて下さい!」そんな風に言われると、

ついつい、ハッスルハッスル♪です。(笑)

まぁ、いつもですけど。(爆)

それよりも、そんな機会にマッセアトゥーラを選んでもらって光栄です!



Tさんのこのような、こんな考えを持った若い世代の方が、どんどん増えれば、

日本の将来、巷に溢れている〝制服スーツ〟は無くなりますね♪



「スーツは仕事着だから」とか、「人間中身だから」と仰る方が多いですが、

そう言うのって、言い訳っぽく聞こえるのは僕だけでしょうか?





※ちなみに、画像のスーツはTさんとは関係ありません。






このフローティングペン、見覚えありませんか?

温泉地で有名なヌードペン、です。(笑)

企業の販促用として、1930年代にアメリカで原型が発明され、

その後、デンマークのエスケセン社が画期的な技術で一気に広めたそうです。

もしもお手元に、このフローティングペンがあれば、見てみて下さい。

多分、MADE IN DENMARKって書かれているはずです。