【2007年1月15日】

朝から〝湯ったり〟とバスタブにつかり、ラウンジでゆったりと朝食を楽しみ、
そんなご機嫌な朝で迎えたドネガルの1日。
ホテルまで、Mageeのスタッフが迎えに来て下さいました。
Magee本社までは車で10分程の距離、ドネガルの街の外れにあります。
本社は大きく分けて3つの建物、
デザイン・サンプル棟、織り棟、洗い棟に分かれています。

名刺交換の後、色々と質問を受けました。
ドネガルツイードについてどう思うか、年間の取扱量はどれくらいか、
どういう経緯で今日の見学に至ったのか、僕が並べる英単語で伝えるのは大変でした。

今回は英国のヘンリープールが取り扱っているロンドンの某羅紗屋さんと取引のある、
日本の某羅紗屋さんのアテンド、という複雑なルートで実現しました。

まずはデザインルームです。
シーズンの傾向を読みながら、
テキスタイルデザイナーがたくさんのサンプルを作り、指図書を作ります。
その指示書を元に、見本反が織られるのですが、
ここでもデザイナーと技術者の間で、入念な打ち合わせが行なわれています。
過去の生地は全て保管され、いつかの時には参考にされるそうです。
そう、ファッションは繰り返されますからね!(笑)
使う糸は全て外注しているそうですが、
それも全てデザイナーの指示で別注されているので、
マギーのツイードは、完全オリジナルという事になります。
こうして、多くの糸が品番によって管理され、ストックされています。
現在、工場にある織機はレピア織機とズルツァー(スルザー)織機だけだそうです。
※レピア織機=シャトル織機  ※ズルツァー織機=シャトルレス織機 やはり効率を考え、このレピア織機も、もうすぐ入れ替えるとか、、
効率を求めると品質が落ちないか?と聞くと、
織り出してからのスピードを変えないよう調整するので、
それまでの準備や故障して作業を中断したりするロスを減らすことで、
全体のスピードを上げて効率化を図るだけだから、「安心しろ!」と笑われました。

その後、洗いと
乾燥プレス工程へと作業が進み、
最後に検品されて完成です。この流れの中でも、
最近では、フィニッシング(整理工程)は外注する所が多くなっています。
途中の行程で、このブラシで起毛したり、他にも
細々とした工程もありますが、大まかには、こんな流れとなります。
大きな流れは、ツイード(紡毛)もウーステッド(梳毛)も同じような感じです。
ちなみにこのブラシ(起毛機)、昔は一般的に本物のアザミの実が使われていたと聞きます。
今でもフカキ毛織のカシミア最高ランクや、ビキューナ、グアナコの高級素材には使われているそうです。
みなさん作業中にも関わらず、本当に気持ちよくニコヤカにご対応下さいました。
手を止めて直接ご説明下さった方も何人かいらした程です。
感謝です、申し訳ありませんでした(汗)。

その後、15人ほど残るハンドウーヴン(手織り)のウィーバーのところへ連れて行って下さいました。

ここは工場の中にあるのではなく、
Mageeが契約したウィーバーの自宅で織られるそうです。
今回お邪魔したウィーバーも、40年近く織機を踏んでいらっしゃるそうです。
最も若い職人さんで30過ぎの方もいらっしゃるそうですが、
彼は特殊で、彼を除いて、ウィーバーの平均年齢は60歳を過ぎているそうです。
ここでも後継者問題は深刻そうでした。

シンングル巾(75cm)の織物を1反(約50m)織るのに25時間程かかるそうで、
これはダブル巾(150cm)に換算すると50時間かかる事になります。
低速シャトル織機で織れば2日で1反強ですから約6倍。
高速シャトルレス織機と比べると、約14倍です。
画像の左にあるキャタピラーのような連続プレートが、
緯糸の打込みを指示するパンチカード(デザインプレート)です。
これによって木製シャトルが緯(横)方向に走りながら、緯糸を1本1本打ち込んでゆきます。
Mageeでも、複雑な柄や手の温もりを重視した生地だけが
彼等の手によって織られるようです。
画像でボケてる部分が、上の画像の木製シャトルが走ってるところです。
足の動く速度より早いので、足よりもボケて見えてますね!(笑)
ツイードの中でもカラーネップの効いたチャーミングな表情がドネガルツイードの特徴ですが、
それも北の最果てのこんな小さな工房で、彼らが1反1反、織り上げているのです。
ほらね!
昼から急に雨が降り始めたのですが、
大西洋沿いの海岸線に連れていってもらいました。
最果てらしい雰囲気が、この雨のせいで余計に漂ってました。
本当なら見所が沢山あるので見て回りたいところですが、今回はそこだけ、、
それでも、どのような環境の中、どのような場所で織られているのか、
それが垣間見れただけでも良かったです。
画像は撮り忘れてました、、

今回の機会は、本当に沢山の方に支えられて実現したものです。
皆さん、ほんとうにありがとうございました。
そして、洋服好きの皆さん、ドネガルツイードを宜しくお願い致します。(笑)




以前から何度も!紹介している、(オーロラ)写真家の谷角靖くんです。

日本写真家協会の正会員への入会も果たしました!





一時帰国で、来年のカレンダーを持ってきてくれました。

別に20部頼んだので、ご希望の方は是非!










つくば市のWさんのジャケットです。

この生地は、マッセアトゥーラでは人気があって、

日本人が敬遠しがちな緑ですが、意外にスンナリと着て頂けます。

ベースになる緑も、モダンな感じの微妙な織柄が入っていて、

レンガ色のウインドゥペーンが活きてます。





こんなモダンな表情のツイードなら、都会的です。










コーディネートは、「こ~でねぇ~とっ!」って見本。(爆)

ジャケットには、黒いパンツを合わせようとされる方が多い?ですが、

この配色はNさんも、「思い浮かばんかったなぁ~」と気に入って下さったご様子。

フラノのメランジェグリーンのパンツ、粋ですね。












今日フィレンツェのサルトから、僕のジャケットが届きました。

僕が伝えたのは、衿形をオールドフィオレンティーナSTYLEでお願いしただけ。

で、出来上がったのがこのスタイルです。

何とも、、味わい深い雰囲気を醸していますね。





とても綺麗なゴージラインの衿です。

生地はジャンニ氏の秘蔵ストック、ドラッパーズのヴィンテージ、

かなり派手に散りばめられたドネガルツイードです。

写真では判りませんが、10色くらいのカラーネップが入っています。





この状態が、着てみると綺麗に納まるんですから、

ホント手縫いの洋服って不思議です。

ってゆーか、僕の体が歪んでる!?(苦笑)





どんな顔つきに変わってゆくのか、手縫い服の醍醐味です。

この服は未だ未完成、、着込んで自分の僕の服に色付けしてゆきますね!








僕の大学時代は、まだまだ車にステータス性がありました。

みんな、車がなきゃ彼女なんてできないよ!くらいの勢いで車を買ってました。(軟派!)



しかし、今ではオトコの趣味も多様化したことで、

価値観も変わり、車への憧れがなくなっているように思います。

それよりも、そもそも今の車には夢が感じられなくなってると思いませんか?

それは、単なる移動手段(道具)になってしまったから、、



前フリは、ここまで!

ここからスーツの話題に切り替えます!(笑)



車だけでなく、今ではスーツも単なる制服(道具)になり下がってしまいましたが、

日本の経済が急速に伸び、スーツ人口の増加にともなって既製服が台頭してくるまで、

スーツが、給料の2ヶ月分や3ヶ月分もする時代があったのです。

つい40年程前まで、そんな時代でした。



結局は、車や電化製品と同じ末路をスーツも辿ってますね。



経済の発展には、文化を切り捨て均一化してゆくこと、、

それ以外に手段はなかったのでしょうか?

これって、寂しいですね、、



スーツが〝男のステータス〟として復権できるかどうかは、

僕達テーラーのモチベーションに委ねられているのではないかと感じます。






プライベートで買った洋服は、よく実測します。(笑)

買ってなくても、気に入ったシルエットがあれば測ってもらったりもします。(笑)

まぁ、これは迷惑な話ですが、事実やります。

嫁さんの洋服もやります。

レディースには意外な気付きがあるから。



全てじゃありませんが、魅力のある洋服は、ホント良く測ります。

寸法だけでは決まらないのは当たり前ですが、

それでも実測することで、感覚的な洋服イメージから想像される寸法と、

実際の寸法との距離が縮まります。



皆さまの色々なご要望に応えてゆくためには、

僕は実測というのは、自分の眼を養う為には、大切な事だと考えています。

流石、高校時代に〝検品YANASE〟と云われただけの男です。(爆)








帰る途中、自転車をこいでいると雨が降り出してきたので、

急いで黄色信号に突っ込んだら、同じように、

対向車線から突っ込んできたタクシーを避けた途端!

ブッ転んでしまいました。(涙)



大阪駅前の大きな交差店のど真ん中で、

それも北新地からのタクシー待ちの人だかりの出来ている交差点、、

週末の25時近い時間だったので、最高に恥ずかしい。



3分近く交差店の中でうずくまっていた時間が、1時間位に感じられました。



大概な激痛があり、今夜は痛みで寝れそうにありませんが、

総合病院の救急外来で看護士をしている嫁さんに、「そんな位で救急に行っても、

絶対に私の旦那やって言わんといてや!」と真剣に言われて、、

今夜は心の痛みで寝れそうにありません。(苦笑)






今日、Hさんがご希望のスーツは茶でした。

なのに、ご注文下さったのは、紺色のスーツです。

微妙に鮮やかな濃紺で、色っぽい色ですが、どうして茶から紺に、、



会話の中で、「スーツは紺に始まり紺に戻る、、」と言うことが出てきました。

紺色のスーツは、恐らく皆さんが初めて買われるスーツで、

選ばれる色ナンバーワンでしょう。

そして、色々な色を着倒してきた方が最後に戻る色と言われています。



実際、着て見るとスーツ初心者と何が違うのか、、

色が色だけに、素材感、微妙なライン、上下、シャツとネクタイ、

全てのバランスが問われます。



その全てのバランスが取れて、さらに雑誌から抜け出てきたようではなく、

その中に程良く、その人らしさや〝抜き感〟が出ている。



スーツ自体で目立てば、そんな部分には目が届きにくいですが、

紺というストレートな勝負では、そういった微妙な部分の勝負になるため、

熟練を要するって事ですね。



料理でも、コテコテに作られたものよりも、

シンプルな〝肉じゃが〟が難しいのと同じような気がします。



ということで、ここで皆さまに質問なのですが、

どうして紺色が多いのでしょうか?



この世に存在する天然染料が、紺という色が多いからなのか、

(実際には紺色よりも、黄色とかの方が染色堅牢度が高いので重宝された)

インドが英国の殖民地だった時代にさかのぼり、

インドに藍色、すなわちインディゴが多く、そこらで獲れたからとか、、

こんなウダウダでお酒のアテになりそうですね。



ご存知の方がいらっしゃれば、ご意見頂ければと思います。

その辺りを紐解けば、紺色が多い理由が分かるかも、、

紺色が先か、紺色を望む人が多いから紺が多いのか、面白いですね。






【2007年1月14日】

ロンドンでの一夜を過ごし(意味深、笑)、
翌朝、ロンドンスタンステッド空港より、ドネガルを目指す。

出発前にネット予約しておいたライアンエアーが、片道0.99ポンドで運んでくれる。
ライアンエアーは、アイルランド国籍の格安航空会社で、
欧州の格安航空会社の中では最大の航路ネットワークを展開している。
今回は、ロンドン~アイルランドの往復、
この後に向かうスコットランドへの往復も、全てネット予約。
あまりの呆気なさに、飛行機に憧れを持った子供時代を過ごした僕には、
「さぁ行くぞ!」みたいな、期待感というか、ワクワク感は全く感じられないけれど、
単なる移動手段と考えれば、便利で使い勝手も良い。
ネット予約優先なので、販売代理店もないし、
運行自体も経費削減のため、機内でのサービスも最低限に抑えている。
シートまでビニール張りと〝潔い〟削減振りに関心する。
デリー空港(ここは英国領の北アイルランド)に着くと、
アテンド先のマギー(Magee)の方が迎えに来て下っていました。
空港から約100km強に位置するドネガルの町まで連れて行って下さいました。
道中、段々陽が暮れて行く中で景色を楽しんでいると、
速度表示がマイルからキロに変わり、
標識も、ケルト語を主体に英語が併記されるようになった。
パスポート提示もなく、ノンストップでアイルランド共和国に入った事になる。
風景は何も変わることもなく、呆気なく憧れのドネガルに到着した。

趣のあるホテルにチェックイン。
ドネガルに入った頃には、すっかり陽が暮れてしまったので、
ドネガルの風景を楽しめなかったが、
翌朝のドネガルの景色への期待感を高めてくれるロビー。
メニューになかったアイリッシュシチューと
大好物のドラフトギネスを、本場の樽生サーブで楽しんだ後は、
これまた大好きなミスティーネイルを
本場のアイリッシュミストで楽しませてもらいました。
アイリッシュミストをアイリッシュウィスキーでカクテルにすると、
ミスティーネイルで、スコッチウィスキーで割ると、ラスティーネイルになるんです。
ホテルのレストランで、これだけ楽しめた食事は初めてかも。
せっかく良い感じに酔っ払ったのに、
翌日の事を考えると、ワクワクして眠れなかった。